黄金ねっと

広島県福山市出身、千葉県市川市在住の集客屋。フリーで活動中。 2022年3月に福山市に…

黄金ねっと

広島県福山市出身、千葉県市川市在住の集客屋。フリーで活動中。 2022年3月に福山市にUターン予定。移住計画・実行についてブログ「転石苔を生ぜず」を執筆開始。

最近の記事

  • 固定された記事

其之一「じいちゃん、ただいま」

「マサよ、故郷はえぇもんじゃろう!」 車内でそう僕に語りかけたのは、今年還暦を迎えた叔父だ。 僕が、住まいの千葉県から実家の広島県の福山市に帰郷したのは、もう9年振りとなる。 9年振りに再会した叔父は、声こそ昔のまま若々しいものの、頭髪は禿げ上がり、髪色も年齢にふさわしく真っ白になっていた。 「そうだな。やっぱり生まれ故郷は落ち着くな。」 車の窓越しに快晴の瀬戸内の高い空を見上げながら、僕は率直に返答した。 「マサが戻ってきたけぇー、ご先祖様が歓迎しょーるんで。今日ら曇

    • 其之五 父と母との問答

      「2階はピカピカにしょーるけぇ、あんた達がいつ戻ってくるのか心待ちにしょーるんで。」 母はそう言うと「ちっと待ちんさいよ」と父に電話を代わった。 「もしもし、マサか。突然どうした?」 「…あ、いや…」 突然、母から父に電話を代わったので、僕は狼狽えて速やかにまともな返答ができなかった。 「…あ、いや…もうそっちに戻ろうかと思って…」たどたどしく応える僕に父は見透かしたかのようにこう言った。 「そうか。戻ってくるのはいいが、仕事と家族はどうする?奥さんときちんと話し合ってい

      • 其之四 黒いアゲハ蝶

        場所は江戸川区の公園。正午になるかならないかというタイミングの時間。 ひらひらと舞う黒いアゲハ蝶を僕は眺めていた。 僕の周りを中々離れようとしないので、さすがに様子が気になってきた。 “虫の知らせ”ではないが不吉さを感じ、何の解決にもならないだろうが、興味本位でスマホで「黒いアゲハ蝶」と検索してみる。 沢山出てきた検索結果の中で「死者からのメッセージ」という一節が妙に目に留まった。 縁起でもないが、遠く離れた広島の地にいる父や母、そして叔父に何か不幸でも起きたのではないかと

        • 其之三「じいちゃん、遅くなってごめんな」

          実家の仏壇に手を合わせた後、僕と叔父は祖父の墓参りに向った。 墓参りといっても、実家から3分程度歩いた先だ。我が家は山に囲まれた盆地にある。我が家を囲う山の一角を30m程度登った所に祖父の墓はある。 その墓も、生前祖父が自ら建てたものなので、初めてお目にかかるわけではなかった。 僕らはトボトボと墓のある山へと向かった。 9年前とはひとつ変化があった。山道だった墓へ向かう道がコンクリート造りの階段になっていたのだ。 「しんくん、この階段造るのにいくらくらいかかった?」 「ほ

        • 固定された記事

        其之一「じいちゃん、ただいま」

          其之二 “じいちゃん”と“しんくん”

          僕には3人の父親がいる。 1人は実の父なのだが、あとの2人は祖父と叔父。 三者三様のキャラクターで、僕の人格・思考・言動は、この三人から構成されている。 今回は、祖父と叔父について紹介したい。 まずは祖父について。 祖父は8年前、2013年6月末に他界した。84歳だった。 死因は老衰。一般的に言えば天寿を全うした、という事になるだろう。 十代半ばで太平洋戦争に徴集され「東京の中野まで試験を受けに行った事がある」という事が専らの自慢だった。 新幹線も開通しておらず、民間の

          其之二 “じいちゃん”と“しんくん”