見出し画像

あるく

高校時代、色んなことに懸命だった。勉強も、部活も、趣味も、友だちも、全部すきで、全部大事で、全部頑張りたかった。だから、たぶんわたしの寿命は高校時代でかなりすり減ったと思う。いい意味で。

全部やりたくてやっていた。でも、ある日突然、わたしの周りを囲んでいたそれらが、わたしの上に乗っかってくるときがあった。だいたい、一ヶ月に一回くらい。周期的に不安定になるものだとか、疲れてるんだとか、今考えれば原因はいくらでも思い付くのだけれど、そのときのわたしを満たしていたのは、だいすきなものがだいきらいなものになってしまったことへの絶望、だった。

その絶望に打ちひしがれてどうしようもなく動けなくなったとき、わたしはよく歩いて帰った。学校から家まで、一時間半くらい。別に緑に囲まれて気持ちがいい道なんかなかったけど、何も考えないで済んだから。それで、空の写真を撮った。

空が綺麗で心が洗われたとか、そういうことを思ったことは無い。でも、ただ、くるしんでいる自分が居たことをなにかに残しておきたかった。

今でもときどきその写真をみる。なにがそんなにくるしかったのかは、ひとつも思い出せない。ただ、高校生の自分が、たすけてほしい、という目を向けてくるだけ。

ごめんね。わたしはあなたに何もしてあげられない。でも、わたしはあなたでできているから。あなたのことを、わたしは目一杯愛している。

過去の自分を愛せる幸せを抱えて、今の自分は前を向く。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?