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「即興は日常会話」を真面目に突き詰めた結果

最近こんな質問を頂いた。
『テーマを決めて曲をつくる時、使いたい音階がすぐ思いつくのか』と。

こんなことを答えた。あくまでも私の場合。
即興でも作曲でも、テーマを見たときに最初に感じるのは調性(音階)。(たとえば、青空=ハ長調、森=ト長調、森の中に生きものがいる場面=ニ長調など。)

これが絶対!という訳では無く、コロコロ変わるけども(笑)
その場面を見たとき、今の気持ちにフィットする調性が必ずある。』

・・・こんなやり取りをしたのだけれど、
もう少し掘り下げて残しておきたくなったので、noteに書くことにした。

1.「即興は日常会話」ということは・・・

私の音楽創作は、ピアノの即興演奏からはじまっている。
40歳を目前に開始した。

「作曲は小説執筆、即興は日常会話」
このフレーズは、ピアノ即興をやり始めた頃に出会った言葉。

とても良い言葉だなぁって思った。
「日常会話って例えはいいなぁ。親しみやすさを感じるなぁ」って。

私はジャズ即興ではなく、作曲の一環としてオリジナル即興をしたかった。
だから、当時はあまり過去の作品を学ぼうという気はなく、
「日常会話が出来るような、自分の言葉を持ちたい」と強く思った。

40歳まではカバー演奏一筋。吹奏楽部で多少の編曲経験はある。
5歳からのクラシックピアノ、J-POPや演歌、ジャズの弾き語り。
そこで出会った「大好き!」と思えた音楽が自分のバックボーン。

その上で、
最低限の「あいうえお」は「ドレミファソラシド」があるわけで、
後は、過去にいいなぁと思った最低限のコード進行(ⅡーⅤーⅠ、ⅥーⅦーⅠーⅦ とか)をベースにして、オリジナル即興の訓練をスタート。

即興する時には、まずは写真を見て、
自分がその時感じた想いにフィットする響きが何か?→調性が何か?
という訓練を地道に続けていた。そして思うがままにメロディを奏でる。
コード進行はおまけ程度の存在として(強い進行を持つ響きは元々あまり好きではない)。

あくまでも「自分がどう感じたか?」「その響きは本当に心にフィットしているか?」を問いつつ即興の訓練を続けていった。

私の中でいまは、何か物事を見て感じた時に、
その感想を「言葉で言うのか、音で奏でるのか」の違いくらいになっている。

「即興は日常会話」というならば、
よくあるフレーズや、王道なコード進行を沢山覚える事よりも、
子どもが言葉を一つ一つ覚えていくように、心が動く経験を積み重ねて、
「自分の言葉」を身に付けて行けば良いんじゃないかなと思っている。

ちなみに、私がコード進行や音楽理論の勉強をまともにし始めたのは、
即興や作曲を始めてから2年目以降。


ごくごく限られた知識の中でも、
いや、限られた知識の中だったからこそ、
「自分の感じ方」にものすごく集中したうえで即興や作曲をした経験によって、「自分らしさ」に自信を持てるようになっていったんだと思っている。


(…あくまでも、作曲の延長での「即興」の話をしています。念のため。)

2.音楽での「自分の言葉」を持つ

私は、音楽理論の話題が苦手である。

それは、そんなに沢山の事を知らないからというのもあるけれど、
言葉に例えるならば
「単語」や「文法」や「例文集」の話をひたすらしているように感じてしまうから。

そして一番気になるのは、何かこう、
「正しいこと」「正解」を導く議論になっていく気がするから。

あなたにはあなたの感じ方がある。私には私の感じ方がある。
同一人物でも感じ方が違う日はあるはず。

例えば、先ほど私は「青空=ハ長調」と書いたけれど、
以前、コロナ禍にはじめて突入した際のGWに書いた、青空をテーマにした曲はホ短調。途中でホ長調にもなるけれど、ベースはホ短調。まぁ暗い。

これは、あの時だからこその独特な感じ方だったと思う。
YouTubeでの交流の大半は海外のお友達。当時欧米の大変な状況をニュースでも知り(日本も他人事では無かったけれど)、気持ちを共有したかったのもある。

想いと理論。
順序としては、自分の想い・考え>>>理論だと思う。

音楽理論や作曲法を勉強する中では、
理論そのものよりも、
書籍の中で見える各著者の方の「音楽理論との向き合い方」が実に様々なのが興味深いなと思っている。

私が共感するのは、
「理論上間違っているから間違い、という捉え方はナンセンス
(自分がどう感じたかが大事)
「コード進行に引っ張られないメロディをめざすべき」
といった理論との向き合い方である。

(いずれここで、各書籍で気付かされた「音楽理論との向き合い方」を書けたらいいなと思う)

「正しい何か」を身に付けまくるのではなく、「自分の言葉」を持つこと。そう思わせてくれたのは、「即興は日常会話」というキーワード。
この言葉と真面目に向き合ってみて良かったなと思う。

3.さいごに

最近の創作にて。
特にコンペ向けに作曲をするときは、
最初は素直に「自分がどう感じるか」でまずは作るのだけれど、
そこからさらに「客観的にどう見えるだろう?」という吟味をするようになった。

メイン楽器の指定、参考楽曲の提示があるから自ずとそうなっていくのだが、コンペへの挑戦自体が勉強になったと実感するのは、こういう所なんだと思う。

一方、「自分はこう感じる」で創り上げるものと、
オーダー踏まえて「客観的にどう見えるだろう?」まで踏み込んでつくるもの、それぞれに良さがあると思う。(前者を選んでもらうことも多い)

そして、「客観的にどう見えるだろう?」を考えるためには、そもそも、
「自分がどう感じるか」を掘り下げられる必要があると思う。

自分を大切に出来るから、他者の事も大切にできる、みたいな。

「即興は日常会話」というキーワード。
この言葉に出会い、真面目に向き合ってみて良かったなと思う。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました^^

【参考】昨年弾いたピアノ即興をBGMに使った動画。
フェルトピアノの音色がお気に入り。後から鳥のさえずり風なハーモニーをプラスしている。