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離婚の財産分与で自宅の名義変更をすると贈与税がかかる?節税のポイントはこれ!

「離婚の財産分与で自宅の名義を変更することになったけど、贈与税って必要?」

いざ離婚となったときに必要なのが、財産分与。婚姻後に形成された財産であるならば、財産分与は現金だけでなく、自宅などの不動産も財産分与の対象となります。

妻が自宅に住み続け、夫は代わりに現金を受け取るという方法で折半する際は、自宅の名義変更(所有権移転)が必要になることが多々あります。
自宅の名義が夫の単独名義、あるいは共有持分であった場合、夫の所有権を妻に移転するとなれば贈与という扱いになって、贈与税がかかるのではないかと、心配になりますよね。

結論からいうと、離婚の財産分与で贈与税は不要です。
ただし、場合によっては贈与税が課せられることもあるため、事前に非課税になるケースと、贈与税が課税されるケースについて知っておく必要があります。

また、自宅の購入時にかかった税金といえば、不動産取得税に登録免許税、印紙税……。所有者の変更で、それらの税金を再び払う必要があるのではないか、気になりますよね。

そこで本記事では、財産分与で贈与税がかかるケースについてと、自宅の財産分与の際に必要な税金の種類や、その節税方法について詳しく解説しています。

離婚届を出す前にこの記事を読むことで、財産分与の適切なタイミングを把握し、最小限の税負担で財産分与を滞りなく終わらせましょう。


監修者情報

西風恒一(司法書士)(大阪司法書士会所属) 1972年兵庫県生まれ。 大学卒業後は教育業界で講師職・管理職を10年間経験し、平成16年から司法書士業界に入る。平成19年に司法書士資格を取得し、すべての分野の実務を経験する。 現役司法書士として実務を行いながら、法律記事のライターとしても多数の記事を執筆・監修している。


1 離婚による財産分与で贈与税が不要な理由

本当に財産分与で贈与税が課税されないのか、心配になりますよね。
国税庁HP内の『よくある税の質問』を読むと、離婚による財産分与の際に贈与税はかからないと明記してあります。

参考:国税庁

つまり、財産分与で受け取る財産は、夫婦で作り上げた財産を今後の生活のために分与したものであり、どちらか一方からの贈与ではない、と判断されるのです。

ただし、『通常』とされているように、贈与税がかかるケースも存在します。

2 贈与税がかかるケース

では、一体どのような場合に離婚の財産分与で贈与税がかかるのでしょうか。
贈与税がかかるケースは、下記の2つです。
・分与された財産が婚姻関係の中で築き上げた財産と比較してあまりにも多すぎると判断された場合
 (多すぎる部分について贈与税の対象になることがあります)
・偽装離婚であると認められた場合(贈与税や相続税を免れるための離婚と判断された場合)
こちらは判断が難しいため、よほどあからさまでない限りは税務調査が行われることはないと言われています。しかし原則として、この2つのどちらかに当てはまる場合は、財産の贈与とみなされて贈与税が課税されますので、注意しましょう。

2-1 分与された財産があまりにも多すぎる場合

夫婦どちらか一方が浪費によって著しく財産を減らしてしまった。など例外が認められるケースもありますが、財産分与の割合は、原則として2分の1ずつとされています。

これを『2分の1ルール』といいますが、この2分の1を大きく超える割合で財産を分与された場合、贈与税が課税される可能性があります。

例えば、住居だけでなく多数の不動産を所有しており、それらのほとんどをどちらかに分与することになったとします。この分与で受け取った財産が、家庭への貢献度などのさまざまな事情を考慮しても、多すぎると税務署に判断された場合、贈与税が課税されてしまうのです。

夫婦間の贈与は『一般贈与財産用』の税率で計算されますが、その税率は10%から最大で税率55%と、課税対象の財産が多いほど税率が高くなります。

離婚の際に、分与された財産が多すぎるという理由で贈与税がかかる場合、課税される部分は『多すぎる』と判断された部分についてのみです。

2-2 偽装離婚であると認められた場合

脱税などの目的のために、書類上は婚姻関係を解消しているけれども、引き続き事実婚関係にある、いわゆる偽装離婚と認定された場合も贈与税がかかります。
この場合は、先ほどの分与された財産が多すぎる場合とは異なり、分与した財産全てに対して贈与税が課税されます。偽装離婚で分与された財産は、夫婦間での贈与という扱いになるためです。
さらに、本来支払うべき贈与税の申告をしていなかったということになるので、発覚した場合は、
・延滞税
・無申告加算税
などの追徴課税が発生します。
さらに、悪質だと判断されてしまうと、無申告加算税の代わりに重加算税が課税されます。
無申告加算税の金額は、最大で、本来支払うべき税額の50万円までは15%、50万円を超える部分は20%をかけた金額となります。
(税務調査の事前通知後、税務調査後、の申告時期により税率の変動あり)
しかし重加算税になると、本来支払うべき税額の40%に対して課税されることになります。
事情があり、どうしても不動産の名義を配偶者に変更したい場合は、配偶者控除の利用をご検討されるのもひとつの方法です。
下記条件さえ満たせば基礎控除110万円に追加して、2,000万円の配偶者控除を受けることができます。

参考:国税庁

3 不動産の財産分与の際にかかる税金

贈与税以外にも、不動産の財産分与にはさまざまな税金がかかってきます。最大限の節税をするためには、それらの税金について、事前の情報収集が必要不可欠です。

今から解説する項目をしっかりと頭に入れて、正しい節税対策をしましょう。

3-1 譲渡所得税

まず1つ目は、譲渡所得税です。

この譲渡所得税とは、不動産を売却したときに発生した利益、つまり譲渡所得に対してかけられる税金です。譲渡所得税は他の所得とは合算せず、個別で所得税と住民税が課税され、支払い義務は『分与した側=元の名義人』にあります。

不動産は一般的に購入時が一番価値が高いため、譲渡所得税が課税されるというケースはあまりありません。しかし、財産分与時に不動産の時価が購入時より上がっている場合は、課税される可能性があります。

譲渡所得の計算式は下記です。

参考:国税庁

こちらも夫婦間の贈与税控除と同様に、基礎控除が110万円あり、条件を満たせば更に3,000万円の特別控除の特例が利用できます。

ただし、『別荘は適応除外される』点と、『夫婦間ではこの特別控除が使えない』という点には注意が必要です。つまり、離婚成立前に不動産の分与をしてしまうと、3,000万円の特別控除枠がなくなり、取得時と比較して時価が110万円以上上がっている場合、譲渡所得税の支払いが必要になります。

譲渡所得税が課税される見込みで、特別控除を利用しようと考えている方は、必ず離婚が成立してから分与をおこなうようにしましょう。

3-2 登録免許税

登録免許税とは、不動産の登記に必要な税金です。そのため、所有権移転登記(不動産の名義変更)をする場合は必ず支払う必要があります。

税率は住宅を新築した場合や不動産を相続した場合など、登記事項によって変わってきますが、財産分与の際の税率は『固定資産税評価額×2%』です。

例えば固定資産税評価額が1,000万円の自宅を分与する場合は、下記の計算式になります。

つまり、1,000万円の自宅を分与すると、登録免許税として20万円が課税されるのです。
※不動産の価格は、固定資産評価証明書または固定資産納税通知書に記載されている金額をもとに計算します。

自分で手続きを行えば、所有権移転登記にかかる費用はこの登録免許税のほか、戸籍謄本などの必要書類の取得費用、数千円のみです。
しかし不動産の登記を自力でおこなうのは手間も時間もかかるため難易度が高く、司法書士に依頼する方が多いです。

手続きを司法書士に任せる場合は、さらに司法書士への報酬もプラスαで支払う必要があります。司法書士報酬の相場は5〜10万円なので、評価額1,000万円の自宅の名義変更には合計で25〜30万円ほどの費用負担が発生することになります。

原則として、これらの費用は2人で支払うということになってはいますが、負担割合を事前に話し合っておくと安心です。

また、何十万円もかかるため名義変更を行わないという方も中にはいますが、後々トラブルに発展する可能性もあるため、不動産の所有権移転登記は必ずおこなうようにしましょう。

3-3 不動産取得税は課税される場合がある

では不動産の取得時にかかる、不動産取得税は課税されるのかというと、原則として財産分与では課税されることはありません。

ただし、婚姻中に不動産の名義を変更してしまうと、財産分与ではなく夫婦間の贈与としてみなされてしまい、『分与された側に』不動産取得税が課税されます。

そのため、自宅等の不動産の財産分与をおこなう際は、譲渡所得税の控除を受けるためにも、離婚届が受理されてからの分与がおすすめです。

ただし、

・慰謝料として、現金の代わりに不動産を譲り渡した場合
・元配偶者を、離婚後も扶養をするために不動産を譲り渡した場合

この場合は、どのタイミングで名義変更をおこなっても、不動産取得税が課税されます。

4 まとめ

今回は『財産分与の際にかかる税金と、節税のポイント』について解説しました。

通常の財産分与で自宅の名義を変更しても、贈与税がかかる事はありません。

しかし不動産の分与に関しては、贈与税以外の税金の支払いが必要になります。税金の負担割合について、財産分与の前に話し合っておくことで、離婚の手続きをスムーズに終わらせることができます。

また、余分な税金を払わないためにも、不動産の分与は必ず離婚が成立してからおこなうことが重要です。

さらに、今回は深くは触れませんが、自宅に住宅ローンなどを組んだ際の抵当権が設定されている場合には、銀行などの債権者に承諾なく所有者の変更登記をすることが当初の契約に違反するケースがありますので、銀行等(債権者)にも確認の上、名義変更を行うことをおすすめします。

離婚で自宅の財産分与をすることになったら、まずは自宅の購入時の価格と、固定資産税評価額を確認して、支払わなくてはならない税金の種類を正しく把握しましょう。


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