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魔法の黄色い靴 - チューリップ

-「和製ビートルズ」といえば-
「和製ビートルズ」といえばどのバンドを思い浮かべるでしょう?
うーん...はっぴいえんど?チューリップ?たま?
これは誰も答えが出せない問いかけですが、「和製ポールマッカートニー」について問われれば、きっと「財津和夫」と答えるかなあ。
そんな財津和夫率いるチューリップの1972年のなんともサイケなデビューシングルです。






-ポップの中に隠された歪んだ愛-
一見素敵なラブソングなのかなって思う反面、財津和夫のセンスによってポップの中に歪んだ愛が隠されております。

君 ぼくの靴をすてて逃げて走っても
ほらね 僕の靴は君をつれてくるよ
君は知らない 僕の魔法の黄色い靴を
だから 君はもう僕からかくれられない

Aメロからとにかく「君」が先行している。
「君」が中心となっている世界なんだって伝わります。
メチャクチャ好きなんだろうなってのは伝わってくるけど、「君はもう僕から隠れられない」ってすでに何回か逃げられているように読めるのも面白い。





-魔法使いはメンヘラくん?-
魔法使いの「僕」は「君」がとにかく好きで、どこに行っても自分の元に帰ってくるような魔法の靴をプレゼントしたのかな。
1行目の歌詞だと「ぼく」になっているので、もしかしたらもっと小さい頃から出会っていて渡したのかも。
「僕」はなんてロマンチックなのか、今でいうとメンヘラと呼ぶべきか。
Aメロからちょっと無理やりな転調を入れているところも、歌詞と相まってサイケデリックさを感じてしまいます。





-天才はBメロでこそ魅せる-
そしてBメロでは聞く人を一気に落としにかかります。

大きな海を 川を越えて
僕のちっちゃなちっちゃな家まで かえってくる

サビに向けてまた盛り上がっていくメロディーとコーラスに心を揺さぶられます。
色んな障害や距離があったとしてもそれらを超えて、大好きな「君」は帰ってきてくれる。
いつもここで泣きそうになっちゃうんだよなあ。
「君」はどう思ってるのか知らないけど。
「君」も落ちてしまうのではないか、かなり大好きなBメロです。





-サビのえげつない不思議さ-
サビでは特筆すべきは、財津さんはなぜか、誰にも「えげない」魔法の靴さと歌っています。
自分で歌ってみると、誰にも[o]あ[a]げないって歌うと確かに歌いづらいような気はする…。
誰にも[o]え[(ou)e]げないって発声したほうが歌いやすい気はするけど、訛りなのか何か意図があるのかはわかんない。





-綿密に作りこまれた名曲-
全体として、かなり時間をかけて作りこんだ一枚目のシングルだったんだなって感じました。
ギターソロでのワウペダルだとか大サビではストリングスが入ってくるところは、アレンジを熟考して作りこんでるのが伝わってきます。
不思議な世界観でサイケな一曲ではあるけれど、アンコールでは大合唱になる、色褪せない名曲です。





-あとがき-
聞くたびに抱く感想は変わるのだけれど、今は「僕」の魔法がとけて「君」にきかなくなってしまった後に歌った曲のように聞こえた。
明日聞いたらまたきっと感じ方が変わるのが音楽の良い所なんだなと、この曲を聞いて思います。

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