恋しい日々 - カネコアヤノ

-拝啓　カネコアヤノさま-
正直なところ最初はあいみょんのライバルくらいに思っていた。
出演しているイベントやフェスがとても良い演者に囲まれているものばっかりだったから、気になってためしにyoutubeで何曲か聞いてみた。
そして！気づけば踊りながらCDを注文していた。
こんな感覚久しぶりでとても嬉しかった。
優しくて温かくて茶目っ気があって芯がある、素晴らしいミュージシャン。
なんて素敵な一目惚れをしてしまったのか！

youtube.com/watch?v=CIWJmkkH3mI

-いいないいな人間っていいな-
例えば作り手が「あなたを愛してる」という言葉を使わずに、一曲の中でそれを表現して、受け手がその感情を受け取ることができれば、それはとても素敵なことだなと思っています。
自分が最大に敬愛しているロックンローラーの甲本ヒロトが、あるアルバムの最後の曲、へらへらしたメロディの中で飄々と

プラモデルのジオラマで　兵隊にパンを渡す
翼を持って生まれるよりも　僕はこの両手が好き

と歌っていました。
最後は「バームクーヘン食べよう」でゆるゆる終わるし、一曲を通して「人間は素晴らしい！」なんて一言も言ってないのに、聞き終わるとどうしてもそう受け取ってしまうのです。
彼らは受け手がどう取ろうがお構いなしなので、深い意味なんて無いとは思うけど、勝手に哲学を感じて勝手に感動して泣いてしまう。
カネコアヤノも同じように、本人は何の気なしで、こちらが勝手に感動してしまう、とてつもないパワーを持った人間賛歌を歌う方だと思います。





-冷たいレモンの炭酸のやつ-
素敵なフレーズには素敵なメロディーが乗って然るべきですが、特にこの曲は一回で覚えて歌えるような素晴らしいゆるゆるメロディー。

今日は雨が降るから
洗濯物を入れなくちゃ
未読の漫画を読まなくちゃ
恋しい日々を抱きしめて
花瓶に花を刺さなくちゃ

ここの一節がたまらなく好きだ。
フフって笑ってしまって気づくと口ずさんじゃう。
気づくと口ずさんじゃってフフって笑ってしまう。
「何でもない一日が素晴らしいよね」なんて一言も言ってないのに、そう優しく寄り添って歌われているように聞こえます。
ただ本当に洗濯物を入れなくちゃって思って作っただけかもしれないのに。
読んでない漫画読まなくちゃって思って作っただけかもしれないのに。
そうだとしてもそうじゃなくても天才の仕業なんだな。
聞いたこっちが勝手に感動しただけ。





-敬具-
カネコアヤノの好きなところをもう一つ。
どの曲にも、彼女が今まで聞いてきた音楽への敬意を感じられるところが好きです。
素敵な音楽をたくさん丁寧に聞いて来たんだろうなあ。
「はっぴいえんどを聞かせておくれよ」とはよく言ったもので、将来「カネコアヤノを聞かせておくれよ」って歌う新たな才能が出てくるんだろうか。
もしも駅でそんな曲をアコギを弾いて歌っている人がいたら、足を止めて耳をすませるような心の余裕が、その時にあればいいな。