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Green Man グリーンマンとストーンヘンジの石


Green Man グリーンマンとストーンヘンジの石               (英国の不思議な妖精と石達 その5)


ケルトのドルイド教の司祭であるギルバート・アトウッドは、
数日、思いあぐねていた。
(なんとか生贄を捧げる事無く、自然の神の怒りを鎮めることは出来ないものか)と・・・。
大きな水害が何日も続いた後、占い師であるウァテスが、自然の神からのお告げとして生贄をほのめかしたのだ。


司祭であるギルバートには、事を決める知識層としての政治的な権限も与えられていた。ドルイド教は霊魂の不滅を信じ、輪廻を説くケルトの宗教であったが、心の優しいギルバートは、血を流すことを好まなかった。



ある日ギルバートは、一人で聖なるオークの森へと入った。
力という意味のロブル(オーク)に囲まれた森は、昼間でも薄暗く、至高の天空神へと繋がっている。
森の中で一番大きなオークの木の下に立って、彼は祈りを捧げた。


すると、オークの木に寄生しているヤドリギの間から、小さな妖精が現れた。
蝶の様にパタパタと羽根を震わせながら、小さな妖精はギルバートにこう語った。「力を使うのでは無く、存在自体が力になれ。
自然を守る大きな力が存在すれば、
秩序は保たれ、無意味な犠牲は必要ではなくなる。
青緑色に黒の斑点の大きな石が、我々の精霊界へと繋がるゲートとなるだろう。
夏至の朝、この鍵を使えば、それは開かれる。」 

気が付くと、ギルバートの足元に何かがころがっている。
それは、ヤドリギが寄生したオークの木で作られた魔法の杖の様に見えた。
彼には、妖精の言葉の意味がよく理解できていなかった。
しかし、青緑色に黒の斑点の石、
それはまさしくドルイド教が儀式をおこなっているストーンヘンジの大きな石のことに違いない。


夏至の日の朝、
ギルバートは円陣状に並んだ直立巨石のあるストーンヘンジへと向かった。
太陽はヒールストーンの付近から昇り、
その最初の光線は馬蹄型の配置の中にある遺跡の中央に直接当たる。
その光を受けて、
ギルバートは大きな青緑色に黒の斑点のある石の前に立っていた。
彼の手には妖精からもらった杖が握られている。
(存在自体が力になる。自然を守る大きな力・・・)
妖精の言葉が頭をよぎる。
(精霊界へと繋がるゲート、果たしてこの石がそうなのか・・・)
ギルバートは無意識のうちに、妖精のオークの杖を大きな石に向けていた。
すると、何か不思議な力に吸い寄せられるように、
オークの杖が石の中に吸い込まれてゆく、それに連れてギルバートの身体も大きな石の中に吸い込まれてしまった。


彼は再び、聖なるオークの森にいた。
どこをどうたどって、ここに辿り着いたのか、皆目見当もつかない。
静かに空気の澄み渡った、いつもの、あのオークの森にいた。
しかし、不思議なことに一番大きなオークの木が見当たらない。
振り返って、足を踏み出そうとしたが、首も足も、ぴくりとも動かない。
腕はどうだ?右腕を上げると、耳元でさわさわと木の葉が揺れる音がした。
何ということだ、腕は枝となり、足はしっかりと地面に根を張っている。
目を閉じると、森の全てが見える、耳を澄ますと、森の全ての生き物の話し声が聞こえる。そして、地の底から突き上げてくるような“力”が身体中にみなぎるのを感じていた。
(わたしは、あの一番大きなオークの木になったのか?)
腕の先の枝には、ヤドリギが寄生しており、蝶のような小さな妖精が、彼の周りを飛び回っていた。


それから何年もの月日が流れ、人々はオークの森には自然を守る精霊がいると信じていた。身体が木の幹で、腕は枝、足は地面に根付いており、顔は葉で覆われ、緑の目が光っている。
自然の神、精霊として、グリーンマンは脅威の存在となっていた。
むやみに木を切ろうとしたり、鳥や動物を威嚇したり、自然を破壊する者は、そのオークのロブル(力)によって、手痛い罰を受けるのだった。
それにより森の秩序は保たれ、自然は守られ、神の怒りは鎮まり、自然の災害も起こることがほとんどなくなっていた。


<物語りの解説>

古代のケルトの人々は、自然の災害は神の怒りであると信じ、その怒りを収める為に、様々な祈祷や生贄を捧げたりしていた。
ケルトのドルイド教の司祭であるギルバートは、弱い者を生贄として捧げることに心を痛めていた。自然の精霊を崇拝していた彼は、オークの森に入り祈りを捧げる。すると、ヤドリギから現れた妖精が、精霊からのメッセージと、オークの杖で出来た妖精界への鍵を授けた。
妖精の言う、青緑色に黒の斑点のある石とは、プレセリブルーストーンのことで、ストーンヘンジに使用されている。この石は、我々人間と母なる地球、そして精霊界を繋ぐゲートとしての目的を持つ。
ギルバートは妖精からもらった鍵を使って、この神秘の石の扉を開き、自然の精霊界の住人となった。人間として権力や力を酷使するのではなく、彼自身が森を守る驚異の力の存在自体になることで、自然の秩序が保たれてゆく。
グリーンマンとして永遠の命と、限りない力を得た彼は、自然の神、自然の驚異、そして古代ケルトのシンボルとして、今も人々の中に息づいている。


<グリーンマン>

グリーンマンは、樹木を司る自然の精霊、自然の神、自然の驚異。キリスト教以前のケルト神話などの森林、樹木へのアニミズム(生物・無機物を問わないすべて霊魂が宿っているという考え)の名残りともいわれる。彼らは古くからヨーロッパ各地の森に棲んでいた。全身が茎や葉で覆われた人間形をしており、大きさは人間並みとも巨人であるともいわれている。「身体が木の幹になっていて、他の木と見分けがつかない」とする伝承もある。その姿形を利用して普段は森に溶け込んでいる。森を荒らす者、自然を甘く来た者には、植物の力と恐るべき腕力で罰を与える。彼らの殆どが男性であるが、女性だった場合はグリーンウーマンと呼ばれる。
ケルト人は森の民で、人間は自然の一部と捉えていた。樹木は、動物の食料(木の実など)、燃料としての薪、建物の材料となり、それらは“命の源”として大切にされてきた。そのため、グリーンマンは森の妖精や守神とされ「豊潤」「多産」などの象徴とされている。一般的に古代ケルトのシンボルとして認識されており、ケルト神話では、 グリーンマンは春と夏の神である。彼は 毎年、毎世紀、消えては現れ、死と復活、生命と創造の流れの浮き沈みに乗っている。スコットランド民話のグリーンマンは、主人公に無理難題をふっかける役目で登場する。自分の城を訪れた人間に60秒以内に城を建ててみろ、などという難問を与え、できなければ殺してしまうのだ。それはまさに自然の驚異そのもので、試練を 乗り越えた者、すなわち自然を制する者には褒美を与え、自然を甘く見た者はひどい目に合わせるのだ。一信教のキリスト教が普及されても自然の神たるグリーンマンに対する信仰が無くなることはなかった。キリスト教がグリーンマンを取り込もうとする過程で、教会建築などの装飾モチーフに使用されるようになった。人間の頭部と植物の枝や葉が一体化した彫刻が、それである。

<ドルイド・オーク・ヤドリギ>

ストーンヘンジで「夏至の日」に儀式を執り行うのは「ドルイド教」。ドルイド教とはケルト民族に信仰された宗教である。自然の中に神が宿るという「自然崇拝」が軸となっており、とりわけ「森や木々」に対する思いは深くオークやヤドリギは珍重された。ドルイドでは、「ドル」がオーク、「イド」が知識を意味し、ドルイドとは、オークの賢者を意味する。オークは木の中でも特に寿命の長い木で、知恵・力強さの象徴として、魔法の杖に使われた。ヤドリギの付いたオークで儀式をしたり、オークの木で作られた奉納物が多数発掘されている。ヤドリギが生えている木には神が宿っていると言われていた。ケルトにおいてオークは、物質世界と精神世界のドアを開くとされ、古代ノルウェー(北欧神話)では、トール、ギリシャ神話では、ゼウスの聖木とされている。大きな木なので、雷に打たれることも多く、雷神トールやゼウスの象徴とされるのではないか、とも言われている。数多くの伝承の中でオークは聖なる木とされ、雷を引き寄せ、尊厳を象徴する。至高の天空(神)の様々な特権をあたられている。オークは物質的にも精神的にもことに堅固、力、長寿、を指す。オークと力はラテン語では同じ語、ロブル(robur)で表される。

ヤドリギ(ミッスルトゥ)は、日本でも栗や欅などの枝の分かれ目から、叢状に繁殖する植物。ヨーロッパの伝説や北欧神話において、ヤドリギは神秘的で重要な役割を果たす。北欧神話において、全ての創造物の中でヤドリギだけがバルドルに忠誠の誓いを立てなかった。その理由は、ヤドリギだけが幼く、契約するにふさわしくなかったから、と書かれている。北欧神話では、ヤドリギが他者に頼って生きている半人前の植物(半寄生状態)であるということを前提として、「幼い者(非成人)との間で取り交わされた契約は無効である」という理屈が構築されている。しかしそれは表面上のことであり、本当の理由はヤドリギは土から生まれる植物ではなく、地中や水中に根を張って生きることもないため、万物の中で唯一「土、水、火、空気」の四台元素から創造されていないものと考えられていたからである。

古くから特殊な植物と考えられていたヤドリギは、クリスマスの他にも雷除けのまじないや、ゴブリン(悪い妖精・精霊)から子供を守る魔除けとして、民間信仰の対象にもなった。イギリスではケルト人が信仰するドルイド教が、ヤドリギが寄生したオークの木の下で儀式を行っていた。ただしヤドリギが全ての実を落としてしまうと、霊力を失うと考えられていた。冬の到来で森の木立はどれも枯れた葉を落としてしまい、森の木々に住めなくなって寒さに凍えた妖精達は、真冬でも葉をつけたまま耐えているヤドリギを頼って、その枝に移り住むのだ、という民間伝承がヨーロッパにある。



<ストーンヘンジ>

世界遺産に指定されている英国の巨大サークルストーンである“ストーンヘンジ”  ロンドンから西に約200kmの英国南部・ソールズベリーから北西に13km程に位置する環状列石(ストーンサークル)のことで、今から2000年以上も前に建設されたと言われている。世界文化遺産として1986年に登録され、2008年には範囲を変更して登録された。円陣状に並んだ直立巨石とそれを囲む土塁からなり、世界で最も有名な先史時代の遺跡である。考古学者はこの直立巨石が紀元前2500年から紀元前2000年の間に立てられたと考えている。しかしそれを囲む土塁と堀は紀元前3100年頃まで遡るという。ストーンヘンジ自体は英国の国家遺産として保有・管理されている。ストーンヘンジが建てられた目的は、太陽や月がこの世界に及ぼす影響を解明する為であると言われている。太陽崇拝の祭壇、古代の天文台、ケルトのドルイド教徒の礼拝堂に使われたのではないかとも言われている。



<プレセリブルーストーン>

“ストーンヘンジ”には、白い「サルセンストーン」と青緑色に黒の斑点の「ブルーストーン」の2種類の石が使われている。英国のプレセリ鉱山から取れるブルーストーンのみをプレセリブルーストーンと呼んでいる。鉱物的にはドレライトの一種で、「プレセリドレライト」とも呼ばれる、大変貴重で神秘的な石である。とてもパワフルな石で、持ち主のエネルギーを高め、心の状態を安定させてくれるといわれている。古代から変容の力を秘めた特別なヒーリングストーンとして、人々から重要視され大切に扱われてきた。時間と空間を超えて現れたといわれているストーンヘンジは、我々人間と母なる地球、そして精霊界を繋ぐゲートとしての目的を持っていたとも信じられている。そのストーンヘンジの中心に使用されたプレセリブルーストーンは、私達の世界と大いなる神秘の世界を繋ぐ扉のような役割をはたしていたのではないかと思われる。私達の祖先、古代の太陽崇拝者、もしくはケルトのドルイド信者達は、このプレセリブルーストーンとどのように繋がり、この石を使ってどのようなワークをしていたのか。プレセリブルーストーンはとてもヒーリング効果の高い石なので、我々の内面の不調和を癒し、整えてくれる力を持つ。そして、時間と空間を超えた旅へと誘うのだ。学術的にも、古代のロマンや神秘という点においても、この石は多くの人々を魅了している。この石とコンタクトを取ることによって、遠い過去の記憶を思い出したり、すでに忘れてしまっている何かを取り戻せるかもしれない。プレセリブルーストーンは啓示やメッセージという意味あいが強いので、選択を迷っている時や、方向性が欲しい時に良い石だ。 恋愛の方向性を迷っている時や、仕事の転機にどう対応するかなど、解決の糸口を見つけたい時に使用すると良い。エネルギーを高め、心の状態を安定させてくれると言われている。







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