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【建築のべんきょう#01】国立西洋美術館本館-ル・コルビュジエ-


上野にある国立西洋美術館へ行ってきました!
ル・コルビュジエが設計した国立西洋美術館本館について学んだことをまとめました。

国立西洋美術館が出来上がるまで

国立西洋美術館設立のきっかけは、第二次世界大戦中にフランスにあった松方コレクションが日本に戻ってくること。実業家・松方幸次郎さんヨーロッパで収集した美術品のうち、パリに残されていた約400点を受け入れて展示するための美術館。吉田茂首相がフランスに松方コレクションの返還を持ちかけた際、松方コレクションを主体とした「フランス美術館」を日本が用意すれば、返還ではなく寄贈すると求められた。

日本とフランスとの間の協議により、ル・コルビュジエが設計者となる。「無限成長美術館」という大きなアイデアの実現。うずまき状の平面構成を取ることによって、長い年月を経ても収蔵品が増えても建物を無限に増やすことができるというアイデア。この考え方をもとに実際に設計されたのはインドの美術館2つ(チャンディガール美術館1968とサンスカルケンドラ美術館1958)と日本の国立西洋美術館のみ。増築の実現はされていない。

1955年にコルビュジエが日本(京都、奈良、鎌倉、東京)を訪れる。上野では、日本人の3人の弟子、前川國男、坂倉準三、吉坂隆正と共に。この時コルビュジエは70歳を超えている。

1956年7月にコルビュジエから基本設計が届く。元々の日本側からの依頼は美術館の設計のみだったが、コルビュジエは複数の文化施設を建てる計画を立てた。当初の依頼の範囲を超えていたこの設計を実現することはなかったが、美術館と前庭、通路を介した東京文化会館の関係などに周囲との関係を重視する姿勢が今なお生き続けている。実施設計や整理は3人の弟子、前川國男、坂倉準三、吉坂隆正が東奔西走して実現させる。

1959年 3月国立西洋美術館開館。

2016年に国立西洋美術館本館および園地を含む、ル・コルビュジエの建築作品群が「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―」世界文化遺産に登録される。フランス、スイス、ベルギー、ドイツ、アルゼンチン、インド、日本の7か国に点在する17の資産で構成されている。始まりは、フランスを中心に世界中にあるル・コルビュジエが設計した建物をひとつにまとめるという動きから。

本館を巡る

キーワードは「モデュロール」「歩いて感じる建築」「無限成長美術館」

モデュロール
平面、断面、各部の寸法はすべて「モデュロール」で決められている。例えば、2階の柱の直径43cm、柱間の内法5m92cm。
モデュロールとは、183cmの人間を基準にした黄金比とフィボナチ級数に基づいてコルビュジエが考案した物差し。フランス語で寸法を意味するモデュール(module )と黄金比(section d'or)を組み合わせた造語。

歩いて感じる建築
コルビュジエは、建築を移動する景色の連続と考える。前庭からピロティ、スロープから展示回廊でなど、歩いて感じる建築を体感できる。

無限成長美術館
収蔵品が増え、増築する際に、外側にうずまき状に増築していく"無限成長美術館"というアイデアで設計されている。実現はしていない。2階の展示回廊はぐるぐると周ることができる。

前庭

小石が埋め込まれたパネル
「モデュロール」で割りつけられた床の目地
オーギュスト・ロダン「カレーの市民」
https://collection.nmwa.go.jp/artizeweb/search_7_detail.php
オーギュスト・ロダン「考える人」
https://collection.nmwa.go.jp/artizeweb/search_7_detail.php
エミール=アントワーヌ・ブールデル「弓をひくヘラクレス」
https://collection.nmwa.go.jp/artizeweb/search_7_detail.php


ピロティ(壁がなく柱だけで持ち上げてできた空間)

ピロティのベンチに座ると、正面に前川國男さんの東京文化会館が見える

近代建築5原則
1. ピロティ 2. 屋上庭園 3. 自由な平面 4. 水平連続窓 5. 自由な立面
このうち4.水平連続窓以外実現されている。屋上庭園へ出ることはできない。

姫小松を型枠にコンクリートを流し込んで作った支柱
コンクリートでありながら木目を持つ

19世紀ホールとスロープ

2本の大きな支柱で支えている19世紀ホール、自然光が差し込む
スロープを上って2階へ

2階展示回廊

「モデュロール」に則った天高
左側4m95cm 右側2m26cm
初期は自然光設計だったが、人工光となっている
バルコニーへ向かう階段は登ることができない
大窓の休憩スペース
コルビュジエ「文化複合施設の全体計画スケッチ」 1956
国立西洋美術館は中庭を囲む文化センターの一部として計画されていた
モデュロール図


国立西洋美術館は日本で唯一のコルビュジエ建築。
前庭は開放されていて、常設展の一般観覧料はたったの500円!
何回も行って、コルビュジエの美学を体に染み込ませたい。


参考文献
⚪︎書籍
「ル・コルビュジエの国立西洋美術館」藤木忠善 鹿島出版会 2011
「ル・コルビュジエ モダニズム建築の美を追いかけて」別冊太陽 平凡社 2023
⚪︎サイト
国立西洋美術館公式サイト
YouTube 国立西洋美術館 National Museum of Western Art, Tokyo
清水建設 ル・コルビュジエの意思、シミズの技術


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