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生焼けのサザエで食中毒に?

 「サザエと岩牡蠣を食べたのですが少し生焼けのような感じでしたので食中毒が心配です。」といった相談を時に目にします。
 私は仕事柄ネット上の食中毒情報は注意深くウォッチしていますが、サザエの生焼けによる食中毒の記事は目にしたことが有りません。岩牡蠣はノロウイルスによる食中毒事例を過去に何度か目にしたことが有ると思います。

1  サザエと岩ガキによる食中毒発生状況は?

 そこで、事実関係を確認するために厚生労働省のホームページの食中毒発生事例を調べてみました。
 2000年以降について調べてみましたが、下記の表1,2のとおり、サザエと岩牡蠣の食中毒はほぼ同数の 7件と 8件起こっています。
 しかし、食中毒の起こり方は少し違っていてサザエは腸炎ビブリオ岩牡蠣はノロウイルスによる食中毒がほとんどです。食中毒の原因の違いはそれぞれの貝のエサにあるようです。

2 過去の事故事例一覧

3 サザエと牡蠣による食中毒は起こり方が違う

【サザエ】 
 サザエやアワビは大型の海藻を食べています。海藻が生えている海底の泥やその周辺には腸炎ビブリオが生息していることがあります。但し、幸いなことに腸炎ビブリオは近年激減しており、サザエによる腸炎ビブリオ食中毒は平成26年が最後になっています。
 サザエが住んでいる海に腸炎ビブリオが存在する場合は、サザエを採取した後長時間常温に置いたり、刺身にした後に時間をおいて食べたりすると腸炎ビブリオ食中毒になります。当然、生焼けで食べると食中毒の危険があります。
 近辺で腸炎ビブリオ食中毒のニュースを目にしたら要注意です。生で食べるときは、採取後早めに8℃以下に保存してください。加熱する場合は十分な加熱(中心部が75℃で1分間以上)と加熱後のサザエへ生の貝から腸炎ビブリオを付着させないよう、器具の消毒や手洗いが大事です。

岩牡蠣】 
岩牡蠣はエラを使って海水中の植物性プランクトンを取り込んでいます。エラは大量の海水を吸い込み、この中に浮かんでいるプランクトンを取り込みます。牡蠣1個につき、1日400リットル以上の海水を取り込むといわれます。海水が河川水のノロウイルスによる汚染を受けると、海水とともにノロウイルスは貝の体内(中腸線など)に取り込まれます。
 岩ガキによるノロウイルス食中毒は平成23年に多発しました。近年は産地のノロウイルス対策が徹底してきたようで食中毒が激減しています。
 ノロウイルスによる食中毒のニュースを目にしたら、その近辺の海はノロウイルスに汚染されます。衛生管理がよほどしっかりした産地でないと食中毒の危険があります。

4 生焼けのものを食べてしまったら

 腸炎ビブリオやノロウイルスに感染した場合、食べた直後に体の具合が悪くなるということはありません。食べて一定の時間後(潜伏時間といいます)に体調に異常が有れば、医師の診察を受ける必要があります。

【腸炎ビブリオ】
潜伏時間:8時間~24時間(平均12時間、まれに短いと2、3時間)
症 状 :激しい下痢、上部腹痛、吐き気、おう吐、頭痛、発熱
発症期間:4日~7日間、脱水症・敗血症に注意
【ノロウイルス】
潜伏時間:1~2日間(平均30時間前後)
症 状 :下痢(激しい水様便のことあり)、おう吐、吐き気、腹痛、ときに低い発熱、頭痛、筋肉痛
発症期間:1~6日間、脱水症に注意


参考:より詳しく知るために!

★ 腸炎ビブリオ感染症とは(症状・治療等)/国立感染症研究所
★ かきウイルス物語(かきを美味しく安全に食べるために)/(財)食品分析開発センター
★ ノロウイルスに関するQ&A/厚生労働省


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