物分かりの良いファンの功罪① 2024.08.27
〜2021年に解散した韓国アイドルグループの推しの思い出を綴るnote〜
数ヶ月前、まだ冬の寒い時期のこと。
2番目の推しが、インスタに自撮り写真を投稿したことがあった。
音楽制作の為に仲間と共同で使っている作業部屋で、カメラに向かって微笑んでいた。
その写真を見た時、ふと彼が被るニット帽に目が止まった。
エンジ色のニット帽。
その帽子は私が数年前、誕生日プレゼントで贈ったニット帽によく似ていた。
編み目が特徴的で、たぶん間違いないと思う。
2番目の推しはオシャレで服装のこだわりが強く、プレゼントを選ぶのが難しかった。
コロナ禍真っ盛りで、オンラインライブだけが楽しみだったあの頃、ふと見かけたエンジ色のニット帽が彼によく似合いそうだと思って、誕生日に合わせて韓国の事務所宛に送ったのだった。
私は貢ぎ系のヲタクではないから、プレゼントは滅多に贈らなかったが、こうして使ってくれている姿を見るととても嬉しかった。
2番目の推しのファンは、貢ぎ系のヲタクが多かった。
ハイブランドの服やアクセサリー、高価なスニーカー。
どれも私の手の届かない値段のものばかり。
私が贈ったニット帽は、手頃な値段の庶民的なブランドのものだったから、使ってはくれないだろうなと思いながら送ったプレゼントだった。
数年経ってそのニット帽を愛用してくれている姿を見るなんて、ちょっとしたサプライズだ。
新大久保で公演していた頃、彼はファンのプレゼントをよく身につけていて、それが元でヲタクたちの争いも絶えなかった。
貢ぎ系のヲタクたちは、自分以外のファンのプレゼントを彼が身につけていると、「あの子からのプレゼントばかり身につけるなら、もう来ない」と直接不満をぶつけていたそうだ。
20万以上するブレスレットを身につけていた時は、さすがに周りをざわつかせていた。
一体誰からのプレゼントだろう、とヲタクたちは詮索していた。
そんな風に、名の知れたハイブランドのアクセサリーをよく身につけていた2推しだったが、私は知っているのだ。
彼が普段着ていた服は、美人ちゃん(私の仲良しだったヲタク)からのプレゼントばかりだったということを。
ハイブランドのものではなく、若者に人気のブランドの洋服を美人ちゃんはよくプレゼントしていた。
(高価ではないがそこそこの値段はしていた)
全身、美人ちゃんからのプレゼントでコーディネートしていたこともあった。
2推しのトップヲタクと呼ばれていた常連さんもよく洋服をプレゼントしていたが、2推しはいつも美人ちゃんがプレゼントした服を着ていた。
美人ちゃんは、彼が自分のプレゼントを身につけていても、SNSで自慢したり、ライバルたちにマウントを取ったりしなかった。
だから、彼が着ている洋服が美人ちゃんからのプレゼントばかりだったことは、知られていなかった。
それをなぜ私が知っているのかというと、美人ちゃんはSNSで自慢しない代わりに、私によくLINEで教えてくれたのだった。
2番目とはいえ私も彼のファンの1人ではあるが、私はプレゼントすることに興味が無かったし、周りに言いふらしたりしない、と信頼してくれていたのだと思う。
美人ちゃんは、本心では周りに知って欲しかったのかもしれない。
だけどそんなことをすれば反感を買うことは分かりきっていたし、無駄に敵を作るだけだということもわかっている。
人目を引く美人な彼女は、そもそも同担から嫉妬されていたから、わざわざ目立つようなことをしないようわきまえていた。
とても賢い子なのだ。
今日着ていた服はこの前プレゼントしたやつなんだ、と嬉しそうに話す美人ちゃんは幸せそうだった。周りに言えない代わりに、私に話すことで気持ちのバランスをとっていたような気がする。
それでもやっぱり、2推しがハイブランドのアクセサリーを身につけている時は、美人ちゃんも心が騒ついていた。
何となく言葉の端々に、彼が自分以外のファンの高価なプレゼントを身につけていることに、悲しさを感じていたように思う。
だからと言って、その不満を2推しに見せることは決して無かった。
そうやって我慢ばかりしていた美人ちゃんは、いつしか推すことに疲れてしまったようだった。
他のグループに通うようになって、自然と足が遠のいていった。
2推しがそこで引き留めてくれたら、気持ちが戻ることもあっただろうけど、美人ちゃんは自分の推しの前では平気なふりをしていたから、彼女の深い悩みに気づくことはなかった。
美人で、頭が良くて、オシャレセンスが抜群だった美人ちゃん。
私とはまるで正反対の子だったが、不思議とウマがあった。
あの頃、よく深夜までLINEでお互いの推しの話をした。
私とハルちゃんは似てる。
と、彼女が言ったことがある。
物分かりのいいヲタクを演じてしまう部分が、よく似ているのだと。
そしてもうひとつ。
彼女はもともと、2推しではなく、私の本命の推しのファンだった。私と知り合う前の話だ。
2推し目当てで行ったSHOWBOXで、2推しの隣にいた推しに一目で堕ちた私と、推しから2推しに"推し変"した美人ちゃん。
そんな彼女とのことを、もう少し書こうと思う。
つづく。
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