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同担への嫉妬と、推しのサプライズ。2022/05/23

〜もう会うことが出来ない韓国アイドルの推しの思い出を綴るnote〜

去年の今頃、推しのグループは解散した。
正確に言うと、事務所との契約を解除するためにメンバー全員で契約を放棄したのだ。

メンバーの1人がのちに配信で話していたが、契約解除の内容証明を事務所に送ったそうだ。

推しとの最後のヨントン(映像通話)の思い出を以前noteに書いたが、思い出すとやっぱり悲しくなる。
もう一度会いたかった。

だから推しとの幸せな思い出を書いて、少しずつ気持ちを整理している。

今日書くのは、推しのファンになってから1年が過ぎた頃の話。

クリスマスコンサートを最後に、4ヶ月の空白期間があった。

もうこのまま日本に来ることは無いのかな、と諦めかけていた頃にスケジュールが発表されて、彼らはまたSHOWBOXにやって来た。

もしかして日本に来るのが嫌になってしまったんじゃないか、と思ったりもしたから暫くぶりに推しに会いに行く日はとても緊張していた。

公演の初日は平日で、私は仕事で行くことが出来なかった。
見に行った友人が、写真や感想をLINEで送ってくれた。

写真の中の推しは相変わらず可愛くて、早く会いたかった。

公演後の特典会で、友人が推しに「ハルちゃんは明日来るよ」と言ったそうだ。
推しは嬉しそうだった、と友人からLINEがきた。

久しぶりで緊張するから、先に推しに伝えてくれて良かった。緊張が少しほぐれた。

当日、新大久保の街中をPR用のフライヤーを配りながら歩く推しを見るために早めに向かった。

メンバーたちが建物から出てくる時、同じように待ち構えていたファンが多く、思うように写真が撮れそうに無かったから、私は少し離れた場所で一眼レフを構えて待っていた。

カメラに気づいた推しは、いたずらっぽく笑って通り過ぎて行った。

フライヤー配りが終わってSHOWBOXに戻ってくると、建物の前でメンバーたちは並んで挨拶をする。
その姿を撮るためにヲタクたちも歩道に一列に並ぶ。
私は推しの前には恥ずかしくて立てなかった。少し離れた位置で、推しの横顔を撮るのが好きだった。

推しの前にはいつも同じ同担さんが並んでいた。
公演もいつも最前列にいる子。

きっと、推しもその子のことがお気に入りなんだろうな、と私は思っていた。

推しは、その子の声に応えるようにポーズをとっていた。私は離れた位置からレンズ越しに見ていて、モヤモヤと嫌な気分になった。

こんなことで嫉妬するなんて、私は大人げないなと落ち込んだ。だけどどうにも推しのその姿を撮るのが嫌で、シャッターを押すのをやめた。

4ヶ月ぶりの公演なのに、私の気持ちはライブの前に沈んでしまった。
ファンに挨拶をして、メンバーたちは建物の中に入っていった。

公演が始まっても私の気持ちはモヤモヤとしていた。そんな自分に余計に落ち込んだ。

公演の中盤、ソロステージのコーナーになった。
その日のソロステージは、推しの担当だった。

週末しか行けない私が、推しのソロステージの日に当たるのは貴重な機会だ。
何を歌うんだろう、モヤモヤとした気持ちもすこし落ち着いてきた。

イントロが流れる。

あ………

それは『너는 나의 봄이다(君は僕の春だ)』だった。

半年前に、推しが私が見に行く日に合わせて歌ってくれた思い出の曲
もやもやした気持ちが、すーっと消えた。
この曲をまた聴くことが出来るなんて思わなかった。

歌い終わって他のメンバーたちがステージに出てくると、推しにこの曲はどういう曲か説明してと促した。

この曲は…、「お前は俺の春だ!だからずっとそばにいてくれ!!」という意味の曲です。

と、少し戯けて説明した。
深い意味などないことはわかっている。
わかっているけど、頬が緩む。

もしかして…今日もまた私が来るからこの曲を歌ってくれたなんてことは、、、、ないよね…と期待しそうになる自分の気持ちにブレーキをかけた。

フワフワした気持ちで、公演が終わると特典会のために2階へ移動した。

推しとの久しぶりのチェキ会。
推しは相変わらず1番人気で長い列が出来ていた。

推し始めて一年、恥ずかしくて滅多にツーショットを撮らなかった私も少しずつツーショットで撮るようになった。
この日は久しぶりのチェキだから緊張したが、一緒に写ろうと思って推しの前に一歩進んだ。

推しは、今日もソロショットかなと思ったようで、私が前へ出ると「ヨシっ!!」と言いながら、おいでおいでと手招きをしてくれた。

少し照れくさかったが、推しの隣に立って一緒にチェキを撮ってもらった。

チェキの後のサイン会。
推しの列に並ぶ。久しぶりの推しとの会話。

「今日は"君は僕の春だ"を聴くことが出来て、すごく嬉しかった。もう一度聴けるなんて思わなかったから、今日来れて良かった!」
と推しに伝えた。

推しは、小さな声で


今日、、ハルさんが来るって、、あの、、、

と言ったから、私の胸は高鳴った。

「Aさんが、私が今日来るって言ったから…歌ってくれたの?」
勇気を出して訊いてみた。

うん…

推しは、そう言って恥ずかしそうに笑っていた。

そうだったらいいなと思っていたけれど、友人から私が今日来ると聞いて、この曲を歌うことにしたと。
たとえそれが嘘だとしても、たまたま歌う予定だったのが今日だっただけだったとしても、推しがそう言ってくれたことが嬉しかった。 

それに、半年前にこの曲を歌ってくれたことを、ちゃんと覚えてくれていたことが何より嬉しかった。
ちゃんと、、覚えていてくれた。
半年前の出来事は私にとってはとても大きなサプライズだったけど、推しにとっては取るに足らない出来事かもしれない…、そんな風に考えた時期があったから、推しの言葉は私を勇気づけてくれた。

特典会が終わり、SHOWBOXの中庭で最後の挨拶がある。
カメラを構えてその様子を撮影するのが、ヲタクたちの楽しみなイベントだ。

挨拶を終えたメンバーたちが車へと向かって歩いていく通り道を、ヲタクたちが花道を作るように並んで見送るのが恒例だった。

私はいつもその列には加わらずに、そのままの位置で推しを見送ることが多かった。
その日も車へ向かう推しの姿をカメラで追っていると、推しがどんどん近づいてきてわざとレンズすれすれに驚かすように通り過ぎて行った。
私はレンズ越しに、「え?え?ちょ、近い」と口走りながら後ずさった。

推しは楽しそうに笑って、車へと向かって行った。

花道を作るためにヲタクたちが居なくなった後の、私と推しだけの数秒間。後から連写したカメラを確認すると、推しはカメラのレンズを見つめながらイタズラっ子のようにどんどん近づいて消えて行った。
動揺しながらも私はシャッターを押し続けた。

幸せな数秒間。

つまらない嫉妬で台無しになりそうだった今日が、こんなに幸せな気持ちになるなんて思わなかった。

正直言うと、私は"古参"と言われるような古株のファンだから、推しにとっては新鮮味のないつまらない存在のファンになってしまうんじゃないかと、怯えていた。

新規のファンのことが羨ましいと、そんな風に思う時期に来ているんじゃないかと。

そんな私の気持ちを吹き飛ばすように、推しは私を幸せな気持ちにさせてくれた。
変わらずに推しを応援していけば、推しもその気持ちに応えてくれる。

今までもこれからも、推しを困らせることはしない。暖かく、優しい、"春"みたいなファンでいようと誓った。

ファンになって1年が過ぎた頃の、そんな出来事の話。

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