見出し画像

推しから来たメール⑤ 2023/03/21

〜2021年に解散した韓国のアイドルグループの推しの思い出を綴るnote〜

推しがメールアプリの返信をしなくなった理由も、返信を再開した理由もわからないけど、ヨントンでの推しはいつも可愛くて優しくて面白かった。

私は、ヨントンではメールの話はしないようにしていた。推しもメールのことは何も言わない。

次のメールは、しばらくは送るつもりは無い。
返信を期待してしまう自分が嫌だから。

メールアプリを送る代わりに、私は手紙をEMSで送っていた。お菓子やちょっとしたプレゼントと一緒に。

推しは、手紙やお菓子のお礼はヨントンで言ってくれることが多かった。

手紙は気が楽だ。
返信を期待する必要がないから。
ヨントンでは照れ臭くて言えないことも、手紙なら書ける。

そんな状況が続いてしばらく経った頃、また知り合いからLINEが届いた。

推しがメールの返信をしなくなったようだ、と。

私に返信がきた後またすぐに、返信が滞るようになったらしい。ハルさんの方はどうですか?と訊かれたが、私はあれからメールを送っていない、と返信した。

彼女の友達は、ヨントンで推しに説教をしたそうだ。ファンの中には学生もいるのだから、お金を払ってメールを送っているのに返信しないのはよくない、と。

私はため息をついた。
推しはどんな顔でその説教を聞いたのだろう。

きゃっきゃ笑って楽しそうな推ししか知らない私には、そんな状況のヨントンなど想像も出来ない。
地獄だな、、、と暗澹たる気持ちになった。

そしてほぼ同じ頃、ファンカフェ(公式ファンサイト)に、あるファンから推し宛てのメッセージが投稿された。

ファンカフェでは、メンバー宛にメッセージを投稿するページがあって、正会員なら誰でも読むことが出来る。

誰が読んだかはわからないようになっているが、メッセージの閲覧者数が表示される仕組みだった。

私は他のファンのメッセージは読まないようにしていたが、そのファンのメッセージはいつもより閲覧者数が多かったから、気になってクリックしてみた。

アカウント名から、SHOWBOXでもよく見かけた日本人のファンだとわかる。

そこには推しに「お願いだからメールを読んでほしい」と書かれていた。今日は、私たちが出会った記念日だから返信がほしい、と。

ハングルで書かれていたから正確なニュアンスはわからないけれど、懇願するような悲痛なメッセージだった。

大勢のファンが読んでいるサイトでそんなことを書くなんて、正気じゃないな…と私は驚いた。
しかし彼女は、そんな判断もつかないほど思い詰めているのだろう。

このメッセージを読んで推しが返信したのかわからないけれど、知り合いの話では返信は来なかったようだと言っていた。

そんな出来事があった頃、メールアプリの運営会社から、推しのグループの登録者全員宛てに警告のメールが届いた。

そこには、メンバーに暴言や中傷するような内容のメールを送らないで下さい。LINEやカカオのIDなど個人的な連絡先を書いて、連絡することを要求しないで下さい、と。
そして、メールの返信を強要しないで下さい、と書かれていた。
返信はスケジュールの合間に送っているため、必ずしも返信するわけではありません。アイドルの自由意思です、と。

こんな警告メールを運営が出すほど、酷い状況なのかな、、と暗い気持ちになった。

SHOWBOXの特典会でも同じようなことがあったけれど、ここでもまたその繰り返しか…

この警告文を読んで、推しに返信を要求していた人たちはどう思っただろう。
推しを追い詰めていたことに、気づいてくれれば良いけど。

そんな警告文が出てからも、毎週のように開催されるオンラインライブとヨントン。

メンバーと事務所の関係は、この時期さらに悪化していたようだ。
あるメンバーが、解散後に配信で語っていた。
「事務所にメンバー全員で契約解除を申し入れたけど、法外な違約金を要求されて脅された」と。
そして、オンラインライブやヨントンだけが自分のモチベーションを保つ唯一の場だった、と。

思い返してみると、この時期のメンバーたちはどことなく表情が暗かったし、顔色が悪かった。
アトピー持ちのメンバーは肌荒れが酷そうで、メイクが異様に濃くなっていた。

救いなのは、メンバー全員の気持ちは1つだったことだ。
不仲で解散したわけではなく、これ以上この事務所ではやっていけないというメンバーの総意だったと語っていた。

そんな状況だったなんて、あの頃は誰も知らなかったけれど、推しに不満をぶつけていたファンたちは、どういう気持ちだったろう。

警告文など出ても、何食わぬ顔で推しとヨントンで話していたのだろうか。

目を閉じると、いつも明るくはしゃいでいた推しの笑顔が目に浮かぶ。

ねえ、ハルさん見て!ほら!

と画面に顔を近づけて、イタズラっぽく笑う推し。
訳がわからず画面に顔を近づけて推しの顔を見る。

目の中に星があるでしょ

推しの瞳の中にキラキラとリングライトが反射して、輝いていた。

子供みたいで幼稚な会話。

画面越しに、まるで至近距離で見つめ合っているようで、恥ずかしくなってすぐに顔を引くと、推しはクスクスと笑っていた。

私の、宝物みたいな思い出。

それからしばらくして、少しずつメンバーたちの様子に異変を感じるようになった。
胸騒ぎ。

何か良くないことが起こっているような気がした。

つづく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?