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久しぶりの新大久保に、私の居場所は無かった。2023/06/07

久しぶりに新大久保へ行った。

途中、SHOWBOXの前を通ったけれど、そこにはもう私の知るグループのポスターは無く、新しいグループのポスターに入れ替わっていた。

あんなにも通いつめたこの場所は、もう過去の思い出となった。

友達とランチをした後、私は1人でKステージへ向かった。

Kステージは、新大久保で1番大きなライブハウスだ。

某サバイバルオーディション番組に出ていたグループの当日券を買って入場開始を待っていると、扉が開いて前のグループのヲタクたちが出てきた。 

何気なくそのヲタクたちを見ていると、ふと見覚えのあるヲタクの姿を見つけた。

私が勝手に『推しのオキニ』だと思っていた子だった。目鼻立ちのくっきりとした美人で、相変わらずボディラインがくっきり見える服を着ていたから一際目立っていた。
彼女も今は新しい推しが出来たようだ。

声をかけようか迷っているうちに、次の公演の入場が始まった。

整理番号順の入場で、私が入った時は4列目あたりまで埋まっていた。私は空いていた端っこの席に座ることにした。

まだ来日して1週間ほどのグループだが、すでに常連ヲタが付いていて、2列目まではほぼ常連ヲタクたちが占めていた。

ライブが始まっても地蔵みたいにじっと動かず、ただひたすら目線がくるのを待っているヲタクの姿は異様な雰囲気だったが、どこか懐かしい。

ファンサービスがまめなメンバーは、自分のファンに合図を送るのに忙しそうだった。

私は1番端っこの席に座って、その様子を観察していた。

その中で、私のような初めて見に来たヲタクにもちゃんと目線を送って手を振ってくれる子がいた。一生懸命で初々しい。
推すならこんな子がいいな。

1時間はあっという間に過ぎた。

公演後の特典会。
どうしようか少し悩んだけれど、また新大久保ドルにハマってしまうことが怖かったから、特典会に参加するのはやめた。

SHOWBOXに通っていた日々は最高に楽しかったけれど、同時に辛いことも沢山あったから、またそれを繰り返すなんてメンタルが持ちそうにない。

どんなに推しに会いたくても、私には週末に通うのが精一杯で、他の常連ヲタクのように毎日通うことなど出来なかったから、常連ヲタクたちが羨ましかった。

ハルさん、たくさん来れなくても大丈夫です。

いつだったか、推しが突然そう言った。
私が引け目に感じていることを、推しは察してくれていた。

なぜ推しは突然そんなことを言い出したのだろう。

仕事が忙しいのに来てくれて嬉しい、と推しは言ってくれた。その言葉だけで、私は胸がいっぱいになる。

マイペースに楽しもうと思っても、新大久保ドルを好きになれば、必ず欲が出てくるのは目に見えている。

自分が行けない日が特別に面白い公演だった時は、羨ましくて落ち込んでしまうし、見ないように聞かないしようと思っても、マウントヲタクたちの自慢話は聞こえてくる。

それに、一度でも認知の楽しさを知ってしまったら、『その他大勢のファン』でいることに物足りなくなってしまう気がする。

認知されることは確かに楽しい。
楽しいけれど、ある種の義務感が生じてしまって、純粋に楽しめなくなってしまうだろう。

無理してでも公演に行かなきゃ、と。
そして、行けないことに焦りを感じてしまうだろう。

今日のライブが楽しかったらまた見に行こうと思っていたけれど、どうにも虚しくなってしまった。

推しがくれたほどの幸せは、他の誰にも望むことは出来ないだろうから。その物足りなさを埋めるために通い続けることは、余計に虚しくなるだけだ。

きっと、私は比べてしまう。

推しだったら、こう言ってくれただろう。
推しだったら、何も言わなくても気づいてくれただろう。
推しだったら、、、、

私はまだ、過去の思い出の中に生きていた。

数日前、推しはまた真夜中にファンカフェに現れた。
私は熟睡していてスマホの通知に気づかなかったが、1人でカラオケを歌っている動画を投稿していた。

その動画で歌っていた曲は、懐かしい思い出の曲だった。何度も推しとこの曲の話をした、思い出の曲。推しが好きな少女向けアニメの曲だ。

いつか歌ってねと冗談めかして言った時、推しは「でも恥ずかしいから…」と苦笑いをして、結局歌ってくれることは無かったが、こんな形で聴けるとは思わなかった。

推しが、今でも変わらずにこの曲を好きでいて嬉しい。

推しはアイドルに戻るつもりはないのに、いい加減諦めようとしている私の心を、そうやって引き戻す。

次の推しを探すより、このままヲタクを卒業する方が幸せかもしれないな…
そんなふうに考えてしまうほど、推し以上の存在を見つけることは難しそうだ。

久しぶりの新大久保にはもはや、私の居場所は無かった。

推しがいた頃の新大久保に私の気持ちは残ったまま、時間だけが過ぎていた。

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