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【大月書店通信】第186号(2024/7/31)

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「大月書店通信」第186号をお届けします。

4月の放送開始以来、話題沸騰のNHK朝ドラ『虎に翼』。本メルマガ読者にもハマった方が多いのではないでしょうか。
個性的な登場人物それぞれが抱えた背景が、女性の権利を制限した戦前の法律や家制度の因習とリンクして描かれるところが脚本の妙ですね。
「結婚って罠だよ!」まさか、NHKでこんな台詞を聞く日が来ようとは…。

今月の新刊『家族、この不条理な脚本』(キム・ジへ著、尹怡景訳)も、国は違えどよく似たテーマを扱っています。
結婚や出産、家族形成のあらゆる場面において、私たちを無意識に規定する慣習や通念、それらを補強する法制度――著者はそれを「家族の脚本」と呼びます。

儒教社会である韓国は、日本以上に家父長的な慣習が根強い一方、2000年代には戸主制を違憲として廃止するなどの変化も。本書は、韓国の家族制度の歩みをたどりながら、その下で性的マイノリティや事実婚カップル、婚外子や国際結婚の子どもなど、「正常」とされる家族像から外れた人たちが受けてきた差別や排除を描きだします。
そして、政治的保守派や宗教右派がなぜ「伝統的家族」にこだわり、LGBTQの権利や生殖における女性の自己決定権に反対するのかをも論じています。

選択的夫婦別姓や同性婚は長年棚晒しの一方で、離婚後共同親権は強引に導入されてしまう日本も、他人事とは思えません。私たちは、私たちの生き方を規定する「脚本」からどれだけ自由でいられるのか――シングルを選ぶ人も含め、誰にも関係するテーマです。

刊行を記念したトークイベントも多数予定しています。「イベント」欄でご案内しますので、ぜひご参加&ご視聴ください。

◆キム・ジへ[著]/尹怡景[訳]『家族、この不条理な脚本――家族神話を解体する7章


【新刊案内】『家族、この不条理な脚本』ほか7月の新刊3点

7月の新刊です。お近くの書店にてお求めください。(定価はすべて税込)

●その“理想”は誰を犠牲にしているのか?
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家族、この不条理な脚本――家族神話を解体する7章
キム・ジへ[著]/尹怡景[訳]1,980円
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LGBTの権利や性教育を認めれば「家族が崩壊」する?私たちを無意識に拘束する「健全」な家族という虚像が作りだす抑圧や差別、排除を可視化する。日韓累計25万部『差別はたいてい悪意のない人がする』著者待望の第二作。

●当事者のかかえる困難を理解し支えるために
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子どもがどもっていると感じたら(第2版)――吃音の正しい理解と家族支援のために(子育てと健康シリーズ)
廣嶌忍・堀彰人[編]1,980円
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言葉がスムーズに出てこないだけでなく、人前で話す機会を避けるなど、さまざまな面で影響し、成人してからも苦しむ人の多い吃音。実態の理解とともに、より楽に話せるようになるための支援のあり方を実践的にアドバイス。

●特集=子どもたちと語り合おう、HEIWA
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月刊クレスコ 8月号(no.281)
クレスコ編集委員会 全日本教職員組合(全教)[編]825円
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3年目に入るロシアのウクライナ侵攻、イスラエルによるガザでの虐殺、その一方で「戦争する国づくり」を進める日本。平和教育の実施が困難になる中で、平和を学び、自分たちの言葉で語る青年と子どもたちの実践を紹介する。

【話題の本・本の話題】

最近の新刊の書評掲載

●虎岩朋加[著]『 教室から編みだすフェミニズム
『教育学研究』第91巻第2号,2024年6月

● 加藤圭木[監修]『 大学生が推す 深掘りソウルガイド
「図書新聞」7月27日

●レイチェル・グリーナー[文]/クレア・オーウェン[絵]『 ようこそ!思春期
「神奈川新聞」7月2日

【イベント】

『家族、この不条理な脚本』刊行記念イベントぞくぞく予定!!

熱田敬子×飯野由里子×梁・永山聡子 『家族、この不条理な脚本』刊行記念 ふぇみ・ゼミ&カフェ ブックトーク

このトークセッションでは、7月に大月書店から刊行された、『 家族、この不条理な脚本: 家族神話を解体する7章』(キム・ジヘ著、尹 怡景翻訳、梁・永山聡子解説)についてふぇみ・ゼミ&カフェ運営委員が語り合うイベントです。解説を書いた運営委員梁・永山聡子がこの本が出る韓国の背景や日本での意義を話します。熱田敬子、飯野由里子、それぞれの専門領域からコメントをします。真夏の暑い夜に、熱い運営委員の話をお聞きください。( ふぇみ・ゼミ&カフェHPより)
 
出演者:梁・永山聡子、熱田敬子、飯野由里子
場所: ふぇみ・ゼミ&カフェ事務所(赤羽)

日時:8月5日(月)19時~21時30分
開催方法:会場参加・オンライン・後日配信あり
参加費:1,500円(一般)。詳しくは 申し込みHPをご確認ください
※お申込みは こちら

太田啓子×高井ゆと里 「「家族」に縛られる私たち、「家族」から排除される私たち」

本イベントでは、『 これからの男の子たちへ』(大月書店)著者で弁護士の太田啓子さんと、『トランスジェンダー入門』などの著者である高井ゆと里さんをゲストに、本書から受け取る示唆と、日韓に共通する家族制度の現代的問題をめぐってお話しいただきます。( 申し込みHPより)

出演者:太田啓子、高井ゆと里
場所: 本屋B&B(下北沢)
日時:8月12日(月)19時~21時
開催方法:会場参加・オンライン・後日配信あり
参加費:2,750円(会場参加)、1,650円(オンライン参加)
お申込みは こちら

能條桃子×福田和子×松岡宗嗣「その脚本を書いたのは誰?~ジェンダーと生殖をめぐる衝突を“家族”から読み解く」

家族、この不条理な脚本』が7月に刊行されました。ここで扱われるトピックには、現代も残る「嫁」役割などの伝統的家制度の問題から、同性婚やトランスジェンダーの家族形成を制約する法制度の問題、学校での性教育で再強化される性別役割……など、日本とも共通する問題が数多く含まれます。
邦訳刊行を記念した本イベントでは、ジェンダーや多様性のイシューに取り組む次世代のアクティビスト3人をゲストに、本書からの示唆や日本社会の今後を自由にディスカッションしていただきます。( 申し込みHPより)

出演者:能條桃子、福田和子、松岡宗嗣
場所: 今野書店地下イベントスペース(西荻窪)
日時:9月6日(金)
開催方法: 会場(定員35人)+配信&アーカイブあり
参加費:2,200円(会場参加)、1,650円(オンライン参加)​​​​​​​

お申込みは こちら


『包括的性教育をはじめる前に読む本―社会を変える性教育』刊行記念
池田賢市さん虎岩朋加さんトークイベント開催!

8月1日(木)に開催される『包括的性教育をはじめる前に読む本―社会を変える性教育』の刊行記念イベントに、『 教室から編みだすフェミニズム』(大月書店)著者の虎岩朋加さんが出演します。
 
今回のトークイベントでは、教育学がご専門のお二人に、なかなかジェンダー平等が実現しない日本の現状を変えるためには、どうすればいいか、それぞれの著書を踏まえながら、話し合っていただきます。( 申し込みHPより)
 
出演者:虎岩朋加、池田賢市
場所: Readin’ Writin’ BOOK STORE(田原町)
日時:8月1日(木)18時30分~19時
開催方法:会場参加・オンラインあり
参加費:1,500円(会場orオンライン)/1週間のアーカイブ配信あり
※お申込みは こちら

◆虎岩朋加[著]『教室から編みだすフェミニズム――フェミニスト・ペダゴジーの挑戦


『焼けあとのちかい』の塚本やすしさんの原画展が開催されます!

焼けあとのちかい』の塚本やすしさんの原画展が、8月1日(木)~12日(月・祝)、国立・ギャラリービブリオにて開催されます。8月11日には塚本やすしさんのトークライブ・サイン会もおこなわれます。ぜひお越しください。

中学2年で東京大空襲を体験し「戦争だけは絶対にはじめてはいけない」と訴え続けた作家・歴史家の故・半藤一利(2021没)が唯一遺した絵本の原画展。作画は、東京大空襲経験者である母からその悲惨さを聴いて育った人気絵本作家の塚本やすし。(プレスリリースより)

〈原画展〉
場所:国立・ギャラリービブリオ(国立)
日時:8月1日(木)~12日(月・祝)11時~19時(最終日は17時まで。8月11日はイベントのため14時40分まで)、水曜(8月7日)定休
参加費:入場無料

〈トークライブ・サイン会〉
場所:国立・ギャラリービブリオ(国立)
日時:8月11日(日)15時30分開演
参加費:1000円  ※要予約、予約は会場まで。
ゲスト:YO-EN

◆半藤一利[文]/塚本やすし[絵]


【今月の赤旗半4段広告】

【編集後記】

まもなく79年目の原爆忌。被爆体験を継承するとりくみがさまざまに模索されています。被爆75年の2020年7月、小社では、長らく「夏の会」の女優たちがとりくんできた原爆朗読劇「夏の雲は忘れない」を書籍化し、読者のみなさまから好評をいただきました。おかげさまで、各地で朗読会や上演会が広がっています。そこで今年8月、書籍を再構成して、CDとしてお届けすることになりました! 朗読は、夏の会の一員であった渡辺美佐子さんです。あの日の広島、長崎の子どもたちの声に、このCDで出合ってくださるとうれしいです。(子)

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