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感染拡大第2波に備え、保健所・地方衛生研究所の再生を(岡﨑祐司)

岡﨑祐司(佛教大学教授、社会福祉学)

疲弊する公衆衛生

 新型コロナウイルス感染確認者数は減少しているとはいえ、次の感染拡大の波――第2波に備え、政府と自治体はどのような次の対策をとるべきなのか。「医療崩壊の危機」については、広く指摘されてきたが、地域の公衆衛生――保健所や地方衛生研究所の疲弊にも目を向けなければならない。その際、この20数年間、強行されてきた新自由主義改革――税財政においても資源投入においても、多国籍企業化した大企業と富裕層の利益確保を優先し優遇してきた諸改革――によって、医療、社会保障、社会福祉だけではなく公衆衛生という地域住民の「いのちと暮らし」を支える社会的基盤が、地方行財政改革(自治体リストラ路線)によって、いかに軟弱になってきたかを明らかにする視点が必要である。

減少する保健所

 新型コロナウイルス感染症専門家会議の5月14日、29日の「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」では、「保健所の体制強化」「地方衛生研究所の体制強化」をあげている。しかし、そもそも保健所は地域にどの程度、設置されているのか、またなぜ改めて地方衛生研究所の体制強化が提言されているのだろうか。
 そこで、保健所の設置数を確認しておこう。全国保健所長会の示したデータ(1989年度から2020年度までの16年度間の保健所数の推移)*1 から、保健所数をみたものが表1である。

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 各レベルで保健所数が最も多かった年度は、全国では1992年度の852 [102自治体]、47都道府県では1991年度の636、指定都市では1994年度の124[12指定都市]、東京都23区では1996年度の53である。最も設置数が多かった年度の保健所数を100とすると、2020年度は全国と都道府県で約55への減、指定都市では実に約20への減(5分の1近い減)、東京都23区は半数以下に減っている。単純計算しても各都道府県で13か所以上設置していたことになるが、中核市が登場し府県の保健所機能がそちらに移行したと考えても、中核市の保健所数は60か所であり、減少分をカバーしているとは言えない。
 また単純にみても、ひとつの指定都市で11か所以上の保健所を設置していたことになるが、行政改革における出先機関の住民サービス「集約化」によって大都市の保健所が住民の身近な存在ではなくなっていることが、この表から明らかである。

過酷な状況にある保健所職員

新型コロナウイルス感染症拡大のもとで、保健所は過酷な状況におかれていた。いくつかの報道を振り返っておこう。

(1)4月2日、NHK、WEB特集「コロナと闘う公務員たち 厚労省“コロナ本部現場の保健所は*2 では、厚労省の対策本部に加え”現場の保健所の悲鳴”として、東京都内の保健所を取材している。電話相談が2月後半から一気に増え、多い時には1日に300件、朝から呼び出し音が鳴りっぱなし、検査要望や感染疑いの訴えのほか、企業の社内消毒、休校中の家族のコミュニケーションの悩みの相談や保健所への苦情、半ばパニック状態でかけてくる人もおり、1本の電話に30分以上の対応になるのが普通だと伝えている。

 PCR検査の検体採取では、保健師・医師のペアで該当者のところへ行き検査機関に運搬するが、相当な時間をかけ1回1回防護服を着用し、自宅(住宅街・マンション)に行くにも、周囲の視線に気を使い夜間に赴くこともあるという。感染者の入院調整も複雑で、限られた受け入れ病院に断られることもあり、仕事が終わらない。感染者の行動履歴の確認・濃厚接触者の特定・健康観察(朝晩2回、100人以上の体調をメールや電話で管理)・夜間の相談対応もある。記者は、同時多発の業務を10人強でこなしていることに驚き、他課の応援態勢があるが人員不足は明らかで、「職員の誰かが倒れたら、もう終わりです」という現場の声を紹介している。

(2)5月9日、京都新聞「拡大防止の最前線/保健所職員奮闘/多岐にわたる業務、残業200時間、心ない非難も」は京都市の保健所を取材している。「遅くとも22時には退庁しましょう」と掲示されているが、3月・4月の残業が200時間弱の職員がいる、多くの職員が終電に間に合う時間に仕事が終わった日はなく、休みは子どもの卒業式1日だけ、4月中旬に職員体制は倍以上になったが、精神的に参り廊下で涙を流す職員もいたと報じている。
 また、感染外来がパンク状態で受診できないことにいらだつ住民から、「死んだらおまえのせいや」と電話で言われることもあるが、「ここが踏ん張りどころ。感染で苦しむ人を1人でも減らすために私たちも頑張るので…」という職員の声を紹介している(京都市は各行政区の保健所を廃止し保健福祉局内に機能集約しているので、取材先は医療衛生推進室であると思われる――岡﨑)。

(3)5月10日、毎日新聞大阪本社「『殺す気か』牙むく市民/疲弊する保健所職員/法改正で統廃合、弱体化」は大阪市の保健所を取材し、切迫する保健所の業務実態を紹介したうえで、大阪市は2000年に全区にあった保健所を一か所に集約し、区には窓口業務を担う保健福祉センターをおき、大阪府では1990年度に53か所あった保健所が18か所に減らされ常勤医師、保健師もこの20年間で6割減少していることを伝えている。

 また、大阪市が保健所の感染症対策課職員24人の勤務時間を調査した結果、3月の平均残業時間は60時間(2019年3月は28時間)、休日出勤も常態化しており、調査対象外の区の担当職員の残業も深刻だと思われ、臨時採用などで職員を増員、府は40人規模の保健所チームをつくり検査検体の搬送業務を支援していると報じている。

地方行財政改革VS「住民のいのちと暮らし」

 京都市について補足しておく。京都市職員労働組合によると*3 、「新型コロナウイルス感染の第一線で働いているのが、医療衛生推進室の感染症対策保健師」であり、「3年前の機構改革で各区の保健センターの感染症担当が統合された部署で、3月まで課長以下10名という体制」で運営されていたという。応援体制は拡充されたが、相談専用電話は委託業者が対応、医療機関からの電話、専用電話につながらない市民からの電話もあり、3月は電話が鳴りやまず、全員昼食もとれない状態であった。
 新聞報道の見出しでは、住民の厳しい言葉が、保健所職員を追い込んでいるように受け止められる。たしかに、大きな不安や恐怖から職員に厳しい言葉を投げつけた住民が少なくなかったことは、事実であろう。しかし、ことの本質、本当の原因は住民ではない。問題は、PCR検査の十分な体制や専門外来の整備を後回しにしてきた政府の対応、集約化の名のもとに地域の保健所と職員を減らしてきた自治体の姿勢にある。公衆衛生の最善線である保健所の数を減らし、保健師活動を後退させてきた地方行財政改革(自治体リストラ路線)VS「住民のいのちと暮らし」という関係が、対立の本質である。

人員不足の現場から、人員不足の現場に人を補充する

 もうひとつの報道で補足しておこう。
(4)5月18日、しんぶん赤旗「通常業務に支障/見えぬSOS/地域の保健センター忙殺」は、東京都内のある区が設置している保健センター(保健相談所)の状況を伝えている。区センターから、保健所の応援に人手がとられ、乳幼児健診や生活習慣病の予防、精神障害者の社会復帰訓練ができない、母親が精神的に不調を抱え子どもが保育園に通えなくなったケース、DVのリスクのある夫婦で妻の精神疾患が悪化、発作で救急搬送されたケースなどが起き、自粛のなかで「SOSを出せない人が家に閉じこもっている」問題に対応しきれない保健師の苦悩と実情が報じられている。 基礎自治体の保健センターなどでも増大・多様化する業務に比して人員が不足しているなかで、「そもそも人員不足の現場から、人員不足の現場に人を補充する方式」(区市町村から都道府県へ)が、「人員不足・機能低下の連鎖」を生み出していることがわかる。それは新型コロナウイルス感染に対する住民の不安や恐怖だけではなく、これまで困難や支援を必要としていた人の不安や恐怖も大きくし、保健所職員・行政職員の疲弊という悪循環を生み出している。

「急場しのぎ」の対策では「人員不足・機能低下の連鎖」は解決しない

 実は先にみた、専門家会議が出した「保健所の体制強化」の内容は、新たなものではなく、すでに3月と4月に、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部(以下、厚労省対策本部)が、自治体の衛生主管部局に対して示している内容である。

 3月13日の事務連絡「保健所の業務継続のための体制整備について」では、保健所業務が増大しているが積極的疫学調査に重点的に人員を投入しクラスター対策を行うため、「保健所の業務継続のための体制整備」として、以下を「参考にし」、検討するよう自治体に連絡している。
 ①帰国者・接触者相談センターの外部委託、②退職した保健所職員の雇用など非常勤職員の活用、③所内で他業務を担当する職員の応援、技術的職員が業務に専念できる体制整備、市町村や学校、医療機関の協力による専門職員の応援派遣(保健所職員の拡充)、④業務を精査し緊急性の低いものを縮小・延期、④関係機関や住民への保健所の仕事の重要性を啓発。
 4月4日の事務連絡「保健所の体制強化のチェックリスト」では、①保健所の本来業務への「衛生主管部局以外の事務職員」の支援、「外部委託等」可能な業務と、②「縮小・延期が可能」な業務を例示し、全庁的検討の参考にしてほしい、としている。①の19業務には、「帰国者・接触者相談センター業務」、「流行地域・国からの帰国者の健康監視」、「濃厚接触者の健康観察」、「入院患者の経過状況報告」、「PCR検査の検体の搬送」などが、「外部委託」や「事務職員による支援」で対応可能とされている。また、「入院勧告・措置の調整」、「臨時の医療施設の開設」などが「事務職員による支援」の例示とされている。②「縮小・延期」は、人口動態調査のほか、健康教育・健康相談や事業者による麻薬や覚醒剤原料の廃棄の立ち合い、食品衛生法の関係などの21の業務があげられている。
 これは新型コロナウイルス感染症対策に重点化させるために、やむなく(一時的に)保健所の機能・役割を維持する「急場しのぎ」の策の例示である。“思い切った資源投入も人員保障対策はしないが、当面、外部委託や外部からの応援を活用し、限られた専任職員の労働強化で危機を乗り切れ”ということで、文字通りの「保健所の体制強化・職員の拡充」策ではない。対策本部として示すことができるのは、これが限界であろう。問題は「人員不足・機能低下の連鎖」を断ち切る、保健所の基盤整備を行うかどうかである。

感染拡大第2波対策と本来機能回復――2側面からの保健所強化で

 住民にとって、また医療機関や福祉事業体にとって、新型コロナウイルス感染症対策の地域拠点として保健所は最も重要な行政組織である。だが、保健所はその業務だけをしているわけではない。地域保健法では保健所の行うべき事業として、地域保健の思想の普及向上や統計のほかに、食品衛生、上下水道、廃棄処理、環境衛生、母子保健・乳幼児保健、老人保健、精神保健、エイズ・結核など疾病予防など第6条で14項目、第7条で4項目をあげ、第8条では都道府県の保健所は6条・7条に加え市町村間の連絡調整、市町村への技術的助言・研修などをあげている。
 つまり、保健所は地域住民の健康と生活を守る最重要拠点なのである。いまの時期にやらなければならないのは、感染拡大の第2波に備えた新型コロナウイルス感染症対策(予防、検査体制強化、感染者への医療提供、健康観察、疫学調査など)の体制強化とともに、本来の保健所や基礎自治体の地域保健活動が機能低下に陥らないための基盤整備をすること、すなわち、感染拡大第2波対策(現場職員の安全―感染リスクへの十分な対策を講じることも含まれる)と本来機能回復の2側面からの「保健所の体制強化・職員の拡充」である。
 地域の公衆衛生行政に思い切った資源投入と地方への財源を保障し、地方自治体の公衆衛生、保健行政の「集約化」をやめ、再び地域の保健所や保健センターを設置し、公衆衛生の医師を所長必置に戻すこと、保健師の大幅な増員である。
 公共的業務としての地域の公衆衛生を再生するという展望ある政策を示しつつ、当面の状況を乗り切る緊急方策を位置づけることが重要である。感染拡大第2波において「人員不足・機能低下の連鎖」を再来させてはならない。

検査の要なのに法定化されていない地方衛生研究所

 2月12日に全国保健所所長会は保健所所長(公衆衛生医師)に向けて「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する保健所の対応への助言(ver4)」を出しているが *4、「Ⅵ.今後必要となる対応」の項目で地方衛生研究所での検査制度の確保が重要であるとしている。これは、PCR検査は各保健所ではなく、都道府県や指定都市に設置されている地方衛生研究所で行っていることが多いからである。したがって、専門家会議も地方衛生研究所の体制強化を言っている。
 地方衛生研究所は、「地域保健対策を効果的に推進し、公衆衛生の向上及び増進を図るため、都道府県又は指定都市における科学的かつ技術的中核として、関係行政部局、保健所等と緊密な連携の下に、調査研究、試験検査、研修指導及び公衆衛生情報等の収集・解析・提供を行うことを目的」*5 として設置されるものである。ただし、法定の機関ではない。自治体の条例による研究検査機関である。
 法定化を求める関係者の声は、以前からあるが、実現していない。地方衛生研究所全国協議会加盟の研究所は全国82か所である*6 。多くは行政直営であるが、大阪府と大阪市は、それぞれ50年・100年の伝統をもつ研究所を地方独立行政法人化し統合した(大阪健康安全基盤研究所)。

地方衛生研究所の窮状――7年前から訴えがあった

 地方衛生研究所の現場から、どのような声があがっているのだろうか。2014年3月に「厚生科学審議会感染症部会」(当時)において、地方衛生研究所全国協議会会長の小澤邦寿氏(当時)が参考人として、「感染症対応における地方衛生研究所の現状と課題」と題した報告を行っている。小澤氏は地方衛生研究所の現状は非常に厳しいと前置きしたうえで、資料を示しながら、次のような説明している*7

〇2004年度と2009年度にまとめた各研究所対象の調査をみると職員数は13%減、予算は30%減、研究費は半減している。
〇常勤の衛生系職員数を人口10万人当たりでみると、都道府県では人口当たりの職員数が少なく、10か所で10万人あたり1名を切っている。
〇都道府県の「研究所間の格差」が拡大し、許容レベルを下回ると危惧している。「平時の感染症対策、あるいはパンデミック時の対応において、自治体間の格差がでているということです。(中略)感染症に対する自治体の能力が異なるために、健康危機対応能力が格差を生じて」おり、全国一定レベルの水準を確保できるのか、危惧される。
〇資料、「微生物検査ができない理由」(2004年度と2009年度のアンケートの回答数)では、「技術を有するものがいない」27%、「検査に必要な機器又は設備を保持しない」41%、「検査に必要な予算がない」96%になっている。
〇資料、「自治体(本庁)に対する要望」(2010年のアンケート)では、全ての地方衛生研究所の86%が「研究所の予算への配慮」を、68%が「人員増」を、51%が「研究所業務を理解し技術力を活かすような支援」を求めている。
〇本庁、特に財政課や人事課からの削減圧力が非常に強く、県民にサポーターがいないので、本庁が一番標的にしやすい組織である。
〇「病原体検査診断研修」の受講生の経験年数や研修前の自己評価のデータから、地方衛生研究所は未熟な職員を抱えており、職員も少なくOJTやトレーニングする余力がないと思われる。
〇微生物検査は高度化・多様化が進み、検査技術に遺伝子検査も導入されており、新技術へのキャッチアップ、検査の信頼性確保が重要である。検査機能は地方衛生研究所に集約化・中央化が進んでおり、その検査レベルが低下すると、あとがない。ルーチン検査から健康危機管理に必須の特殊検査まで、全衛生行政検査、微生物検査が集約されている。
〇重要な機能を担っているが、「これほど行政でないがしろにされている公的試験研究機関もないのではないか」。法的位置づけがないため地方自治体がどう運営しようと「全くフリーに近い状況になっています。そこへいって財政や人事の草刈り場になっている」。法的位置づけが必要である。
〇資料、「厚生労働省に対する要望」(平成22年度アンケートより)では、全地方衛生研究所の90%が「法的な位置づけ」と「設備機器への補助」を、87%が「技術向上のための支援」を求めている。

自治体リストラの標的になった地方衛生研究所

 この部会報告より先に、厚生労働省の地域保健対策検討会が報告書をまとめている(2012年3月27日)。そのなかでも、小澤報告と同様に職員数・予算・研究費の減少と常勤衛生職員の配置格差が指摘され、疫学の専門人材の育成・確保を含め地方衛生研究所の充実・強化がうたわれている。しかし、6年前の厚生科学審議会での審議のあと、地方衛生研究所の状況が大きく改善されたわけではなく、いっそう厳しい状況が続いていることは想像に難くない。それは、いまだ地方衛生研究所を法定化していないこと、地方独立行政法人の推進や地方行政財政改革の推進、公共部門の市場化促進という新自由主義改革の地方版が推進されてきたからである。
 地方衛生研究所は、感染症対策はもとより、食中毒対策、化学物質による健康影響対策においても調査研究の拠点である。事実、多くの地方衛生研究所が「地域感染症情報センター」としての役割も果たしている。保健所と同様に、新型コロナウイルス感染症拡大の第2波に備えた体制強化とともに、そもそも職員数・予算・研究費を削り続けてきた方針を転換し、地方衛生研究所の体制整備を行う必要がある。
 政策的議論を深めるためには、過去20年から30年の都道府県の保健所数と設置地域の変化、専任の保健師の数と業務の変化、市町村の保健師の数と業務の変化、地方衛生研究所の業務と専門職員数の変化など、住民が公衆衛生行政の変化を理解できる基礎資料を整える必要がある。

権利としての公衆衛生をつくる

 憲法25条にあるように、公衆衛生は生存権保障の重要な柱のひとつである。日野秀逸氏は、”自分の生命・身体に関することは自己の主権に属する、他者に支配されるものでなない”という、「健康の自己主権論」をとなえてきた *8。さらに日野氏は、①自ら主権者として主体的に健康の維持や予防、回復にかかわる、②しかし、個人の取り組みには限界があり、共同、協同の取り組みが重要である、③人権としての健康の確保に国と自治体が責任をもつ行政責任論に発展する、としている。
 保健所や基礎自治体の保健センター、地方衛生研究所は、地域を基盤に予防や学習、情報公開、検査を通じて住民の生存権としての公衆衛生を維持する要であり、「健康の自己主権論」(健康の主権在民)を高める専門職の活動拠点である。
 繰り返すが、いま重要なことは、行政機能の「集約化」方針をやめて、地域の公衆衛生行政に思い切って資源を投入し、地方の財源を保障し現場体制の整備を図ることである。第2波への備えと本来の公衆衛生行政を機能回復させるという、2面作戦が必要である。
 新自由主義改革と決別し、国民の「いのちと暮らし」の危機に対応できる政策への転換は、医療、社会福祉だけではなく、公衆衛生、地域保健においても求められている。


 *1 全国保健所長会ホームページ( 保健所数の推移、2020年5月29日閲覧)。
*2  NHKホームページ(2020年5月24日閲覧)。
*3  京都市職員労働組合ホームページ(「新型コロナ関連特報 最前線職場でいま何が…」、2020年5月24日閲覧)。
*4  全国保健所長会2019年度地域保健総合推進事業新興再興感染症対策等健康危機管理推進事業班「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する保健所の対応への助言(ver4)」2020年2月12日。
*5  厚生省厚生事務次官通知(発健政第26号)「地方衛生研究所の機能強化について」1997年3月14日、都道府県知事、指定都市市長あて、(別紙)地方衛生研究所設置要綱。
*6  地方衛生研究所全国協議会のホームページ「地方衛生研究所ネットワーク」の名簿による(https://www.chieiken.gr.jp/index.html 2020年5月29日閲覧)。
*7 「2014年3月14日 第3回厚生科学審議会感染症部会議事録」。以下、小澤氏の報告内容、発言は同議事録、資料は第3回部会の資料。
*8 日野秀逸『健康と医療の思想――健康の自己責任論をこえて』労働旬報社、1986年、同『憲法がめざす幸せの条件』新日本出版社、2010年を参照。

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(おかざき ゆうじ) 1962年生まれ。佛教大学教授。主な著作に、『老後不安社会からの転換――介護保険から高齢者ケア保障へ』(共編著、大月書店)、『現代福祉社会論―人権、平和、生活からのアプローチ』(高菅出版)、『安倍医療改革と皆保険体制の解体―成長戦略が医療保障を掘り崩す』(共著、大月書店)ほか。


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