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それでも私は・・・ ~Before becoming a Girl~

この作品は、

リレー小説企画『片想い~l'amour non partagé~』https://note.mu/muturonarasaki/n/nb994a7209d23

と追加仕様である

『片想い~Deus ex machina~』
https://note.mu/muturonarasaki/n/n86faad184839

の参加作品に登場する登場人物が織りなすオムニバス

後日談を勝手に妄想して作ってます。(^-^;

リレー小説企画全員集合!!

パッパラパッパ~パッパッパ~

パッパラパラパラパ~パッ

表紙

ぱくたそ - フリー写真素材・無料ダウンロード http://buff.ly/1nmYecj

表紙:https://www.pakutaso.com/20151048282rgadfat.html

☆★☆★☆★☆★

いつもうるさかった女の電話は、バレンタインデーを境にプツリと途絶えた。

俺の未来が消えた日だ。

俺の幸せが、たった一ヶ月で終わる。

俺は単に世の中に振り回されたに過ぎない。


俺は、天女 宏美(あまめ ひろみ)。

この名前を一番嫌っているのは、俺自身だ。

女扱いされてきた自分は嫌いだった。

スキだった人はもういない。

それも全て世の中に振り回されたに過ぎないことだ。


「宏美くん。ごめんなさい・・・」

山内ひとみと別れた理由は他でもない。

スキだった人に逆プロポーズを受けたからだ。

そう、俺とのことは何かの間違いだったんだ。

俺が普段通りにしていれば、こんな誤ちは起きなかった。

ヴァレンタインデーのチョコレートバラマキ事件なんてものは、やはり勘違いだった。

というよりも、事故だ。いや、事件だと言い換えよう。

酔っぱらいの目には、その彼氏の表情までは見えていなかったのだろう。


山内ひとみは、田島敦樹と結婚した。

ただそれだけのことだ。

披露宴の会場に参加したのは、生れた頃からの知り合いだからだ。

俺の前には立花瑠璃(たちばなるり)という女性が座っていた。

その人の言葉が聞こえてきた。

「あ~あ、本当だったら私があの人の隣に立っているはずだったのになあ」

そうだ。俺も・・・

「お前は、俺の隣にでも立ってろよ」

瑠璃って人の友だちなのだろう。茶化すように言っているようで、周りに聞こえない声でボソッと言っていた。瑠璃って人には聞こえたのだろう。俺にすら聞こえたんだから、当然か。

「えっ?なになに?柳、今のプロポーズ??」

「ばっかか。プロポーズはもっと別の場所でやってやるよ。じゃねぇよ。バンドの話だよ・・・」

「へぇ~~」

ニヤニヤとしやがって・・なんだ。この幸せそうなカップルは・・・

見せつけやがって・・・

友達のスピーチが続いているが、全く耳には入ってこない。

後ろの席では、友達交流会でも開いているのだろう・・・

聞きたくなくても、耳に入ってくる。

「私達が初めてであったのは、私が飼っている愛犬のアルと田島さんの飼っているステラちゃんが公園で出会ったのが・・・」

「お前、結局なんで道隆と一緒に行かなかったの?」

「フランスはちょっと遠いかな。それに近くに実咲がいたから・・・」

どこも、カップルだらけということか・・・

俺はこれ以上、ここにはいられなかった。

そして、その日の内に住んでいた場所を捨てた。


初めての一人暮らし。

もう、あそこには戻れない。

とは言え、特にやることもなく、近くの公園に足を運んだ。

ベンチで休憩していても、他人の声が俺の耳に届いてくる。

「美希さ~~ん。今日もいい写真撮れてますか~。僕の写真も撮ってくださあ~い」

ジョギングしながら手を降る男の目線の先にいるカメラを片手に持っている女性。

個人情報的には、ダダ漏れだな。

美希という名前と、あの顔でどれだけの個人情報を絞り出せるだろうか。

女性は、何も言わずジョギングマンにカメラを向けている。

何枚か撮影したのだろうか。


「ねえ、知ってる?この前逮捕された子。えぇ~っとそうそう。桐山杏(きりやま あん)。この公園だって、殺害現場」

「うっそ~。マヂ~~。確か小学校の頃の同級生じゃね。やべ~。私達も殺されてたかも~」

「それでさ。出るんだって・・・ここ。その亡くなった女のお化け」

「きゃ~~、やだ~~。天国と地獄じゃん」

「え?どういうこと?」

「この公園、天使のうさぴょんが出るんだってぇ~」

「なにそれ~、かわいい~~。絶対そっち。巡り合うなら、絶対そっちだよね~」

「だよねぇ~。私も早く幸せになりた~~い」

女子高生の会話は・・・現実と非現実の境目というものがきっと無いのだろうな。

天使のうさぎがいるわけねぇ~だろ。


「さやかちゃんまって~~」

「健くん遅いよ~~。もう少しでママのいるアタックだから~。がんば~~」

子どもたちが無邪気にかけっこか・・・


「Hay!You!どうしたんだい。浮かない顔して」

誰だ。この外人・・・

「Oh!私は怪しいものじゃ。ありませ~~ん」

十分、怪しいだろ・・・

「私、退院しまして~、これから快気祝いに自家焙煎の珈琲喫茶「アタック」に行くんですが、一緒にいかがですか~~」

「いえ・・すみません」

「元気ないですねえ。僕の友人からの言葉を君にもプレゼントしま~~す。何を迷うことがある? 君のその眼は、君が正しいと思うことを誰かに伝えるためにあるんだよ~~」

「あ、はい。ありがとうございます」

俺が何に迷っているっていうんだ。

外人はその言葉を伝えて満足したようで、この場から去っていった。


遠くを眺める俺の目に、一人のお爺さんがいる。

衰弱しているネコに言葉をかけ、抱き上げて家に連れ帰ろうとしているのだろう。

お爺さんを見てるとふとこんなことを思う。

きっと、ポッカリと空いた大きな穴、先の見えない「未来」を心配している。

でも、それは何処かで誰かの新しい「未来」が始まっているということなのかもしれない。

全ての登場人物たちに、新しい別々の「未来」があるように。

☆★☆★☆★☆★

【登場人物紹介】

新庄道隆(しんじょうみちたか)
大学四年生。身長195cm、血液型はA。口下手で恋愛下手で自分に自信がない。成績は普通。顔も普通。メガネ男子。ケーキ屋アルトでバイトをしているうちに菓子作りに興味を持ち始める。
初出:第1話『並んで歩く。』(ならざきむつろ)
https://note.mu/muturonarasaki/n/n9b2a5648ae4c


羽島観由(はねしまかゆ)
専門卒後、洋服店の店員になって一年。身長165cm、血液型はO。笑えないギャグを放つ。きつい言葉も放つが、爽やかでちょっと男っぽい性格。顔はまあまあキレイ。髪は肩までのパーマで茶色。一房だけかすかにピンク色。おしゃれ好き。
初出:第2話『ブルーベリーチーズに恋をして』(michi7cchi)
https://note.mu/michitarou9/n/n267d623bc96e


田島敦樹(たじまあつき)
34歳・・・・・
インディーズのバンドマン。クールなベーシスト。親の持っているアパートなどの不動産管理業務をしつつ、週末は都内各所のライブハウスに出演。見た目は怖そうだが心優しいジェントルマン。捨て犬だった片目の見えない老犬ダックス(ステラ)を飼っている。
初出:第3話『待ち人』(MA3)
https://note.mu/etsukomami/n/nf5ca21110a5c


山内ひとみ(やまうちひとみ)
田島敦樹が管理人をつとめるアパートの住人。会社勤めの何かと冴えない37歳。結婚願望はあるが、容姿や年齢にコンプレックスを抱えている。彼氏いない歴3年。
初出:第4話『現実』(月里文音)
https://note.mu/asaginokaze/n/n2ea117c67e04


天女 宏美(あまめ ひろみ)
20歳。自分のことを「僕」という。身長140後半。背が低いし、少し細め。髪はセミロングで雨に弱い軽いくせ毛が羨ましがられる。子供の頃からひろみちゃんと呼ばれることが多い。女子友達が多い。よく女子会に招かれる。女性っぽいと言われ、女装させられることもある。肌が綺麗と言われ、体毛が薄く、脇毛が生えてない。女性と二人でデートすることも多いけど、ベスト・フレンド止まり。服飾デザイナー見習いで普段のファッションはパーカーとジーパンスタイルでカジュアルが多め。
初出:第5話『それでも俺は ~Before becoming a ・・・~』(ふぃろ)
https://note.mu/otspace0715/n/n7fbc7829d554


幸島 未来(こうじま みらい)
20歳。専門学校生。目標がなく、将来が微妙に不安。母親が産みの母親でないことを数年前に知り、ショックを受けつつも、母親との関係はホドホドに良好。感受性が豊かで、暇があると妄想している。影のある人が好きだが、安心感も求める。欲ばりでお調子者。
初出:第6話『【グレイッシュブルーの恋】(短編小説)』(Caori Takay)
https://note.mu/caorimba/n/na8a39c54e921


ひろくん(ひろくん)
3歳。野良猫。人間不信の茶トラ。
お尻のあたりに心無い人間がつけたカッター傷がある。
未来とは1か月前くらいに出会い、最初は警戒していたものの、未来の献身的な態度に心を許すようになる。
初出:第7話『冬の日差しの下で』(ならざきむつろ)
https://note.mu/muturonarasaki/n/n7fe588d41665


前島紘三(まえじま こうぞう)
61歳。仕事(公務員・消防士)を定年退職したばかり。趣味は水彩画。
子どもが見れば泣くほどのいかめしい顔で、ご近所付き合いも下手。連れ添った妻とは5年前に死に別れた。動物は嫌いだと公言しているが、動物を見る目はどことなく優しい。
初出:第8話『動物嫌いの私の話』(未沢静水)
https://note.mu/miaplacidus/n/n506dd9879739


加倉井美希(かくらい みき)
25歳。デザイン事務所に一般事務として勤務。学生時代から痴漢に遭ったり、女友達に陰口をたたかれたりして、男性不信、人間不信気味。ちょっとやさぐれている。社会人になってからは彼氏なし。趣味は写真を撮ること。
初出:第9話『ファインダー越しの恋』(かねきょ)
https://note.mu/kanekyo12/n/n43a9e93e8c8e


野原歩(のはら あゆむ)
20歳。平均的な大学生。市民マラソンに参加するために公園で自主トレに励んでいた。マラソンの結果は2位だった。
初出:第10話『走れ! 歩くん』(candycandy)
https://note.mu/candycandy/n/n2f943ceff473


秦野 唯(はたの ゆい)
一ヶ月前に通り魔に殺された美少女の幽霊。享年17歳(高校二年生)。性格は気さくで明るい。自分を殺した犯人を探して呪うべく、犯行現場である公園付近を浮遊する毎日だったが、歩に出逢い恋をしてしまう。
初出:第11話『”こっち”に居たいの』(月里文音)
https://note.mu/asaginokaze/n/n7112bfc6a9f5


天使ウサギのサラちゃん
ペットショップの売れ残りで、殺処分される前日に唯と出会い、短いけど幸せな生涯を終える。今は、天国へ魂を連れて行く役目を担っている。怒りで地獄へ連れて行かれそうな唯の魂を見つけ、天国へ連れて行くべく、見守っている。
初出:第12話『ぼくは知っているよ』(AngelRabbits)
https://note.mu/vdgg/n/n6c6829841c26


桐山 杏(きりやま あん)
高校時代の同級生を殺害した犯人として連行された。スポーツ万能で成績優秀だが、普段は口数が少なく友人が少ない。見た目はボーイッシュ。事件後、霊体や殺害された少女の飼っていた白うさぎが見えるようになり引きこもりがちだった。
初出:第13話『見える』(もらすとしずむ)
https://note.mu/morastocisum/n/nf6e4bfdbf5c5


小室 ファンタス(こむろ ふぁんたす)
杏の元家庭教師。日本人とイギリス人のミックス。10歳までイギリス在住。話すとき、たまに英語が混じる。大学卒業後、出版社勤務。犯罪等のレポート・記事の執筆を担当。妄想癖が酷く、出会いも無い日々にたまりかね、また実在の杏のことが好きすぎて、脳内で理想の女性「杏」を創りだす始末。
職場で倒れ入院していた最中に、杏が異母兄妹であることを知る。
初出:第14話『明けても暮れてもアイラブユ—♡』(Caori Takay)
https://note.mu/caorimba/n/nbbe5ec3f743a


長岡 貴美子(ながおか きみこ)
主婦。10歳のさやかちゃんのママ。夫は総合商社のサラリーマン。
夫婦仲は悪いわけではないが、釣った魚にエサはやらないタイプの男で、貴美子としてはちょっぴり不満。自分がお手伝いさんのような感覚が拭えない専業主婦だったが、2年前から隣町の自家焙煎「アタック」にパートにでる。
初出:第15話ダッシュ『アタックの女』(MA3)
https://note.mu/etsukomami/n/ndbb11d1f8e3e


斉藤 健(さいとう たける)
10歳
さやかちゃんのお友達。さやかちゃんの家を守る自宅警備隊隊員一号だ。隊長のさやかちゃんにこき使われているが、さやかちゃんのママに合うために日々努力している。2年経過した。
初出:第16話『自宅警備隊♪』(ふぃろ)
https://note.mu/otspace0715/n/nc9eee7b010de


立花瑠璃(たちばなるり)
普段は子どもっぽく、無邪気。ファッションにも興味がなく、基本はバンドTシャツにジーパン姿。小柄だが、マイクを持つと人が変わったような色香を放つ、ヴォーカル。
作詞を全て1人でこなしているが、よく忘れる。ところが忘れた部分を「しれっ」と別の歌詞で歌い上げてしまうため、ステージに支障をきたしたことがない。
初出:片想い企画『待ち人』スピンオフ小説 (cometiki)
https://note.mu/cometiki/n/nc24ad8ce8d3c


柳大輔(やなぎだいすけ)
普段から"お兄ちゃん"キャラな、ギター担当。兄弟の多い家で育ったため、優しく面倒見がよい。すらりとした長身で、やわらかい表情を持つため、女性ファンが多い。作曲もこなすので、作詞担当の瑠璃とは自然と長い時間一緒にいて、気づけばすっかりお守り役になっている。
初出:片想い企画『待ち人』スピンオフ小説 (cometiki)
https://note.mu/cometiki/n/nc24ad8ce8d3c


真壁実咲(まかべ みさき)
初出:「こんな恋もいいんじゃね?」(michi7cchi)
https://note.mu/michitarou9/n/n6dcf9b0036a0


その他関連作品

『いつかあの並木道の下で』 | ならざきむつろ記念館 | note https://note.mu/muturonarasaki/n/n24182035eb22

「こんな恋もいいんじゃね?」(短編小説) | michi7cchi | note https://note.mu/michitarou9/n/n6dcf9b0036a0

一歩 | MA3 | note https://note.mu/etsukomami/n/na2ca534b02e7

『雪解けのしずく』(短編小説) | 月里文音 | note https://note.mu/michitarou9/n/n6dcf9b0036a0

オセロ教授の不思議な指輪 ~白の章~ | ユキノフ【国語愛好家】 | note https://note.mu/yukirnoff/n/n5f262f59794a

冷たい頬 | かねきょ(まんが・イラスト) | note https://note.mu/kanekyo12/n/n817efc524c27

【瞳の奥に愛[eye]ひとかけら】(短編小説) | Caori Takay | note https://note.mu/caorimba/n/na86efb89f53d

本文中「過去から自分を護ってきてくれた言葉」

第15話①『幸せな片想い』より引用。「目」は「眼」に変換させて頂いた。

https://note.mu/muturonarasaki/n/n38013ca84c57

挨拶!! | MA3 | note https://note.mu/etsukomami/n/n024a2954ebee

片想い企画『待ち人』スピンオフ小説 | cometiki | note https://note.mu/cometiki/n/nc24ad8ce8d3c


謝辞:

ならざきむつろ記念館様

この企画を立ち上げて頂きありがとうございます。

素敵な企画に参加させて頂き楽しく小説を書くことが出来ました。

本当にありがとうございます。


またリレー小説企画の参加者様

勝手に後日談を書いてしまい、申し訳ございません。

また、素敵な作品に出会えたことに感謝致します。


支えてくださっている読者の皆様

いつも応援して頂き、本当にありがとうございます♪

小説という分野はnote.muでは余り馴染みがないようですが、読んでくださる皆様がいて、それぞれに思いを馳せて、いろんな感情がnote.muで生まれることが、これからももっと増えていけば良いなと思います。

皆様、本当にありがとうございます♪


この企画は2月に開催される二つのイベント、

『バレンタインイブライブ』

『第1回noteショートショートフェスティバル』

を応援しています。

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