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蟻とガウディのアパート 第三話(序章)

「乗り換え」2/4

 プラットフォームには、私と同年代の女性が大勢いた。
友達とおしゃべりしながら次の列車に乗り込む人、スマホを手に神妙な面持ちで向かい側の列車を待つ人。 
だが、たいがいの女性は、ベンチに座り込んで途方に暮れていた。

 私は、目の端にベンチに座る女性たちをとらえながら歩いた。 まもなく日没だ。 
顔を上げると、プラットフォームが遙か遠くの山麓まで伸びているのが見えた。 
その両端には、ベンチと背の高い灯体が等間隔に配置され、夕暮れ時の滑走路のようだった。 
 プラットフォームの外側の風景が、刻々と、鉛色のまだ新しい闇に溶解していく。 
やがて山の端に沈殿していたえび茶色の光のオリが小豆色に変わると、墨のようにとろんとした夜が垂れ込め、あたりを一気に塗りつぶしてしまった。

 灯体が女性達をスポットライトのように照らしている。 彼女達は一様に、紙袋やカバンをいくつも抱えていた。 
(あの人の紙袋からは、ぬいぐるみの顔が覗いてる。ご本人の物かな?娘さんのかな? え~っと、私の紙袋には何が入っているんだっけ?)
何が入っているのかわからない紙袋を、手や肩に提げている自分のことが、不思議に思われた。 
その姿は灯りに照らされ、いびつに膨らんだ影を落としている。

 

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