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「場」
夏至。このことばの雰囲気が好きです。大粒の雨が落ちる水たまり。三ツ矢サイダーのシュワシュワの泡が消えていくグラス。夕陽に染み込む蚊取り線香の匂い。いくらでも想像できる夏至の向こうにある景色たち。
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暦ではもう夏に至る場になったようですが。梅雨の重たい空気は陽の氣をつい忘れてしまいがちになります。暦と人との感覚の間にはちょっとした誤差があるように思います。それは自然と人との間にある距離感にも似ている気がします。
梅雨明けの太陽が顔を出したら。少し呼吸をゆっくりめにしてみよう。歩くペースも気持ち呼吸に合わせてゆっくりと。冬至に向かって流れる氣にシフトチェンジした夏にしよう。っと。
思い立ったら吉日とばかりに。友引の午前中に美容院の予約をすると。炭酸クレンジングをすすめられました。サイダーのシュワシュワを思わせる気泡で毛穴までお手入れして戴けるのは夏至ならではないだろうか。冬至に向かうのだから。このくらいのプチプチ贅沢は必要経費と自己判断いたしました。
炭酸クレンジングの時におもしろいことがあったので文章にしてみたいと思います。
3台あったシャンプー台は私を含め朝1番の予約のお客様で埋まっていました。光の入らない奥まったスペースに横になると。よし!気持ちよくなるぞ。此処でゾーンに入るのか入らないのかは仕上がりに大きく関わってくるからです。うまい具合に日常から離れたら。夏至は戴いたも同然じゃないですか。
シュワシュワというか。シュワボコシュワボコ。炭酸の気泡が耳元でいい響きです。視覚が閉じ始めようとした時に。少し甲高い。例えるならジャパネット高田さんの女性バージョンのような声が気泡の響きに重なります。そうね。美容院は月に1度の社交場でもあるのだから。これはもう仕方のない事ですね。下降していきそうな気分にブレーキがかかる。
両手で頭を包まれて丁寧に両サイドをマッサージされながら。時折する高田さんの声が私を現実に連れ戻してくれます。それでも気泡の微妙な刺激と微かな響きに引きずられるようにどこかに行こうとする私がいました。ふとすると引き留めようとする高田さんの声。(いつの間にか高田さんになってしまった)
私だけの場になかなか入っていけないのはちょっと残念な気はしたけれど。今ある気持ちよさは充分に満喫して帰ろう。そうだ今の幸せを心でことばにしてみよう。寝心地のよいシート。程よい冷房に気の効いたブランケット。静かと言えば静かな空間。最高の脳への刺激。ことばが私の居る場になっていく。
高田さんから意識を外すと声がざわめきになり遠くになる。高田さんの声に合わせると鮮明に声が際立つ。話している仕事の内容まで聞き取れる。
おもしろい。今までは人を遮断するようにして場を作っていたけれど。高田さんのお陰で違う感覚の経験ができているみたいです。ゾーンに行く感覚からゾーンになる感覚。もちろん、その後の私は。しばらく高田さんから意識を外して。自分の場でゆっくりと夏至への切り替えに勤しみました。
美容院から帰ると。空は急に暗くなりました。山の向こうで雷が転がる音が聞こえてきます。最近、雷の音を聞くと心のモヤモヤが晴れるのを感じる時があります。あのゴロゴロの音には雨降って地固まる。そんなめでたしめでたしみたいな響きがあるのかも知れません。もちろん、落ちたら落ちたで大変だから。めでたしめでたしなんて遠くに雷を聞いている場にいてこそなんだと思います。
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今回の見出しの画像はみんなのフォトギャラリーから。
クリエイターKeiさんのイラストを使わせていただきました。
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