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はこのはこのはこ

「箱が届いたね。」

「うん、大きな箱が届いたよ。」

「いったい誰から送られてきたんだろう?」

「わからない。」

「送り主の名前が空欄なんて、すごく変だな。」

「本当に変だな。おまけに箱の柄が、世界の終りのような感じがする。」

「とっても悲しくなる柄だね。なんだか世界が終わってから、また世界が始まって、やっと届いた荷物みたいだ。」

「とっても遠い人から届いた荷物みたいだ。」

*

「箱の中身は何なんだろう?」

「開けてみようよ。」

「でも、誰から送られてきたのか、わからないよ。」

「それじゃあ、開けるとまずいね。」

「うん、とってもまずいよ。」

「いちにのさん!」

「あ。」

「開けちゃった。」

*

「おや、箱が入ってたね。」

「箱の中に、箱が入っていたよ。」

「箱が届いたの?」

「箱に箱を詰めて送って、どうするつもりなんだろう?」

「どうするんだろうね?」

「箱の中の箱の中には、何が入っているのかな?」

「やっぱり、箱かもしれない。」

「そうかもしれない。」

*

「箱の中の箱に入っているのが、箱でないこともありえるね。」

「じゃあ、入っているとしたら、なんだと思う?」

「請求書とか。」

「僕たち何も買ってもないよ。それはすごく困るな。」

「きっと、前の世界からの請求書だから、それだったらチャラじゃないのかな?代金を振り込む方法がないからね。」

「それもそうだね。でも、前の世界って・・・」

「いちにのさん!」

「あ。」

*

「困ったな。」

「うん、困ったね。」

「また、箱が出てきたよ。しかも、開封厳禁って書いてある。」

「じゃあ、どうして送り主は、僕たちにこれを送りつけたんだろう?」

「わからない。きっと、わけもわからないまま、開けちゃいけないって書いたんだろうね。」

「開けちゃいけない箱は、きっと送っちゃいけない箱だよ。」

「こんなものもらったって、嬉しくないな。」

「頭を抱えて悩んじゃうな。」

「参ったな。」

「うん、参ったね。」

*

「箱の中の箱を、元どおり箱に詰め直して、これでよし。」

「これでばっちし。問題なし。」

「箱は知らない、知られちゃいけない。」

「箱の中身がなんなのか。」

「あとは配送スタッフのみぞ知る。送り主は愛と夢のペッペケペー。」

「ペッペケペーって誰なの?」

「知らない。僕たちは一切関係ない。隅から隅まで無関係。」

「俺たちゃ豪傑ペッペケペー。はるばる昔の宇宙からお届けだ。」

「箱よ、さらば。これで見納めだ。」

「いちにのさん!」


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