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GO TO XXXX

飴色の傘で天を突いて歩いた

理性の靴底の通奏低音が泥濘に沈んだ

全方位に向けて認識は遅延し

私たちの粗末な言葉は瓦解した

口の中に僅かに残った言葉の残滓は美味くも不味くもない、普通の缶コーヒーでまろやかに蕩け喉の川を下っていった

俺は何かを思った筈だった、何かを感じた筈だった、私たちは世界の移り変わりの、その瞬間に立っていたのではないか

路地裏から、七月の雨に練り込んだメランコリックの匂いがした

辺りを見上げると、月明かりに照らされた赤いカーテンが垂れた窓、そこに立つ者と目が合うか合わないかの刹那のところでカーテンは引かれた

カーテンは、赤いカーテンは、まだまだ引かれ続けるだろう

黙っていてもそのカーテンはひかれ続け、カーテンの部屋に住む無垢な人々に、私のようなフーテン者の視線は疎まれ続けることだろう

一番の恐怖は、この地球を覆い尽くすほどの巨大な赤いカーテンを引き下ろす奴らが、いつか現れるかもしれない、あるいは既に現れているかもしれないということなのだ

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