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わたしは泣かない

 何故か急に怖くなってじとーっと冷や汗が出るのを感じて、ぎゅっと眼をつぶる。耳鳴りのアンサンブル。まだ大丈夫、まだ大丈夫。意識が遠のく前に吐く前にどこかに座らなきゃ。深呼吸、深呼吸。やっと扉が開いても人の流れを止める訳にもいかず、端っこの柱に身体を預けてしゃがみこむ。改札に流れ込む人を見ながらぼーっと眺める。ああ今日は吐かなくてよかったな。小田急線の新宿駅の通勤ラッシュは戦いだ。

 職場に着いて施設長との面談。
 「1か月休みたいです。」
 「ここまで来れてるじゃない。」

 最初は何を言われているのかわからなかったけど、家に帰ってからあの言葉を反芻して飲み込む。ちょっといらっときたな。むかつくな。休まないでほしいの?いや違うな。多分「あなたはまだ軽症だね。」ということなんだろう。これまでにも1度相談してたけど無駄だったな。空しいな。無力だな。言わない方がよかった。わたしは泣かない。

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