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maope
備忘のための短編集①
日頃から書いているものは事実に基づく情報記事だが、そもそも巧く文章を書きたいと思ったきっかけは物語を編みたいという欲望が兆したからだった。当方未熟につき、まとまった物語を編むほどには未だ到らない。それでも、せめて、萌したアイデアを開陳することで気持ちを慰めたい。むしろ、noteのような出会い頭で物語を読むといった空間では、短い文章のほうが読者にとって親切かもしれない——と、大義名分を最初に言い訳しておく。
その山村のあばら屋には、誰知らぬ間に居着いた雑種の野良犬がいた。
よく吠える犬だが、恐ろしげな響きが少ない。
表情には人懐っこさが現れている。愛嬌に富んだ野良犬だった。
子どもらは遊び相手として野良犬と戯れたし、大人たちは荷物や赤子の見張りに用いた。けたたましく吠える声が村人の安全に少なからず貢献していた。野良犬は愛されていた。
ある日、遠くの町の資本家が、開発調査のため山村にやってきた。
家族のバカンスを兼ねてのことだ。
妻と子どもと、それから立派な飼い犬の猟犬が伴われていた。
到着したその日のうちに、さっそく散策が始まった。
ふと、一行は野良犬のあばら屋にさしかかった。いつもの通り、野良犬は愛嬌たっぷりに吠えかかった。たちまち、野良犬は猟犬によって噛み殺された。
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