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あの世のJ-POP|#3 SINGER SONGER「初花凜々」

SINGER SONGERは、くるりの岸田繁とCoccoの共同プロジェクトで、タワレコ25周年を祝う曲の制作がきっかけで始まった。その記念曲は2004年に発表され、2005年、SINGER SONGERが発表したシングルのタイトル曲が「初花凜々」だ。

Coccoといえば、純粋すぎる情念を重苦しく歌うシンガーのイメージがあった。だから、TV番組『ミュージック・ステーション』で「初花凜々」を初めて聴いたときはとても驚いたことを覚えている。

「初夏凜々」は明るくて爽やかで力強い曲だ。しかも、センチメンタルなニュアンスが影を潜めたように思う。Cocco名義の頃に比べて聴くと違いを感じられるはずだ。

作詞作曲はCoccoの名義で、編曲はSINGER SONGER。岸田繁の名前がないクレジット表記がとてもシブい。センスの人であるCoccoの歌を、岸田繁が仕事人として多くの聴衆に届くように仕上げていくような共同プロジェクトの色味——フラットな役割分担によるオープンな方向性のある楽しげな情景が思い浮かぶのだ。

私たちは知るよしもない制作の舞台裏を想像すると、歌詞を深く読み解けると思う。過去を懐かしみ、未来を迎え入れる。触れられる周囲を慈み、触れられない彼方に向かって祈る。時間と距離の隔たりのないフラットでオープンな思いやりが歌詞に込められているようだ。

そういえば、2020年からCocco自身が語る記事を見かけるようになった。人は変わるし、社会も変わる。悪くなることもあるし、良くなることもある。はっきりしないことを解消するというより受け入れる心を持ち続けたいものだ。それは強さであり優しさか。




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