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あきれた夜-2022/1/6

たまに、石を集めるのが趣味だという人がいる。
それも宝石や鉱石の類ではなく、
本当にどこにでもあるようなただの石を集めている人。

私の同居人もまさにそれで、
散歩に行っては「良い石があった」と言って持ち帰ってくる。

石の色や形は石によって様々で、彼の言う「良い石」の基準が私には分からない。
でも、そう言うときの彼は何だか嬉しそうだ。

彼はその石たちを居間のTVボードに並べていて、
私は少々あきれつつもその石たちと一緒に暮らしている。


今日彼が持ち帰ってきた石は、綺麗な卵型の石だった。
大きさは直径が5㎝ほどで、色は真っ黒でツルツルしている。
今日の石は確かに少し「良い石」だと思った。

「ほらね、綺麗でしょう」

もうすぐ日が暮れる。
私はやっぱり少々あきれつつも、夜色の卵が孵るのを待っている。