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美しい銀行-2022/2/13

銀行はいつもピカピカだから緊張する。

涼しい冷房の風が頬を撫でる。
待合室には塵ひとつ落ちていないし、
あくせくと動き回る銀行員のネクタイはピンと伸ばされている。
俺はそろそろと自分の鞄の底を漁る。
良かった、ちゃんとある。


今日はまあまあ混んでいるようだ。
俺の番号札は101番、まだまだ呼ばれる気配はない。
隣の席では子どもを連れた若い女がスマホをいじっている。
しかしやけに寒い気がする。
用意してきた帽子をもう被ってしまおうか。


どうにも落ち着かず、キョロキョロと辺りに目をやる。
ご自由にお持ちくださいと書かれたパンフレットの棚が目に入る。
この黒い鞄はとても大きいのでいくらでも入るんだ。


動悸がする。
汗が止まらない。
緊張しているんだ。
それもこれも、銀行はいつもピカピカだからだ。


「101番の方、こちらの受付へどうぞ」

いつまで待たせるんだ。
俺は鞄の底の拳銃を握った。