有名な血-2022/11/18

俺達は血を吸う一族だ。
血を主食とし、人々を悲しみと怒りにいざなう者。

そう、蚊である。

俺達の間でまことしやかに囁かれる噂、
それは、血を吸うと必ず死んでしまう人間がいるという噂だ。
その人間はこの世に1人しかおらず。
その人間の血を吸った蚊は即座に死んでしまう。

しかし、めちゃくちゃ気持ち良いらしい。

いいな～～～！！どうせ俺なんてそのうちすぐ死ぬんだからさ！
気持ちい～～思いして死にてぇなあ！？

しかし、その人間に出会うことができる確率はとてつもなく低い。
そもそもそんな人間いないかもしれないのだ。
所詮は噂だ、死んだ蚊がどうやって気持ち良かったことを伝えるっていうんだ。

俺は諦めの中で、今日も適当な人間の血を吸う。
しかし、だけど、いつか。いつか。

そんな思いが捨てられないのは、
永遠に生きることのできない生き物として仕方のないことだろう。
今血を吸ったこの人間も、思っていたりするんだろうか。
いつか、いつか。
そんな諦めと希望が、俺にも明日を呼んでくるのだ。