闇のピアニスト-2022/2/8
いつまでも眠れずにいる俺が悪いのか。
おそらく斜め向かいの緑の屋根の家。
半年前に越してきた夫婦と女の子の3人家族。
全員が見るからに幸せですって顔をしていて気に障る。
家はもちろん新築だ。
おそらくその女の子。
学校が終わる時間になるとぽろんぽろんとピアノの練習を始める。
家にピアノがあるということはそれなりに裕福なんだろう。
屋根と色を合わせた緑色のポストは、いつでもピカピカに磨かれている。
最近、その音が目を閉じていても聴こえるようになった。
へたくそな音程が繰り返し神経を逆撫でする。
今も俺の部屋はとても静かだ。
1階にいる両親はとっくに眠っている。
今日も上手くいかなかった。明日も上手くいかないだろう。
俺は布団の端をぐっと握る。
本当は鳴っていないピアノの音だけが、いつまでも闇に漂っている。