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安田佳音
2022年2月13日 00:32
銀行はいつもピカピカだから緊張する。涼しい冷房の風が頬を撫でる。待合室には塵ひとつ落ちていないし、あくせくと動き回る銀行員のネクタイはピンと伸ばされている。俺はそろそろと自分の鞄の底を漁る。良かった、ちゃんとある。今日はまあまあ混んでいるようだ。俺の番号札は101番、まだまだ呼ばれる気配はない。隣の席では子どもを連れた若い女がスマホをいじっている。しかしやけに寒い気がする。
2022年2月8日 22:40
いつまでも眠れずにいる俺が悪いのか。おそらく斜め向かいの緑の屋根の家。半年前に越してきた夫婦と女の子の3人家族。全員が見るからに幸せですって顔をしていて気に障る。家はもちろん新築だ。おそらくその女の子。学校が終わる時間になるとぽろんぽろんとピアノの練習を始める。家にピアノがあるということはそれなりに裕福なんだろう。屋根と色を合わせた緑色のポストは、いつでもピカピカに磨かれている