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悲運の人

ペンシルべニア州では、現職上院議員のトゥーミー氏(共和党)が引退を表明、後継を選ぶ選挙戦は民主党のフェターマン州副知事と、心臓外科医で人気健康情報番組の司会者だった共和党のオズ氏による一騎打ちが繰り広げられています。

ところが、フェターマン氏は5月に脳梗塞に襲われる悲運に見舞われます。幸い一命をとりとめたものの、会話で相手が言っていることをすぐに理解できず、発語も意味不明瞭になる後遺症が残りました。

そして、11月8日の投票日に向けたラストスパートの5日の遊説で、口を開く前に、背後に立てられていた米国旗が風にあおられ、軒並み倒れるという象徴的な出来事がありました。

フェターマン氏は、当初大差で当確と思われていたのが、現在は互角あるいは相手にリードを許しており、この旗が倒れる出来事は、同氏が負ける予兆、「天の思し召し」ではないかとSNSで大変な話題となっています。まさに、悲運の人です。

それを、「フェターマンの遊説が幸先良いスタートを切った」と冷笑したのが、以下の共和党全国委員会のツイート動画です。

はっきり言って、ハンディキャップを負った政敵をこのように揶揄するのは、人としてどうかと思います。趣味が悪いです。

ただ、フェターマン氏の立候補自体に問題があったことも事実です。民主党は同氏の脳梗塞で言語能力に問題が起きたことを州民に隠し続けたからです。10月25日の対立候補とのディベート対決で、フェターマン氏に健康上の問題があることが初めて、誰の目にも明らかになりました。これにより、オズ氏が優位に立ったのです。

オバマ元大統領はフェターマン氏に対する5日の応援演説で、「脳卒中は、フェターマン氏の価値観や心、彼の闘いを変えなかった」と褒め称えました。

しかし、州民にとっての問題は彼の価値観や人格云々ではなく、彼が州民のためによい仕事ができるかということではないでしょうか。

上院議員の仕事は過酷です。議場で丁々発止のやりとりをする能力が要求されます。相手の発言を理解できず、モニター画面の字幕に直してもらわなければならないフェターマン氏は、いくら人格に優れて能力があったとしても、不適格だとの指摘が相次いでいます。

米上院には、長時間にわたり討論を続けることで議事進行を意図的に遅延させる「フィリバスター」の慣行があります。民主党が今回の中間選挙で大敗が予想され、共和党に対してフィリバスターを仕掛ける必要性は増すと思われますが、果たしてフェターマン氏は、6時間も7時間も演説し続けることができるのでしょうか。

民主党側は、こうした懸念を「障碍者差別だ」としてヘイト論に持ち込んでいますが、選挙の核心が「ペンシルベニア州民の利益」、すなわち「公」から、「フェターマン氏の利益」「民主党の利益」、すなわち「私」にすり替えられているように思えてなりません。

ニューディール政策や第二次世界大戦への参戦で名をとどろかせた民主党のルーズベルト大統領は障碍者でしたが、それは下半身の不随であり、国務遂行には影響がありませんでした。しかし、フェターマン氏は政治家の命である言語能力に問題があります。

州民は11月8日に、「公」をまず考えて投票するのではないでしょうか。




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