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わなにかさま(五)

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「わりゃ、ヒサエさんとこ来た孫ずら?」
「え?」
振り向くと見覚えのあるおじいさんがそこに立っていた。
おばあちゃんのところへ時々野菜を持ってくるおじいさんだ。名前は知らない。
「お?おみゃ、…」
おじいさんはぼくの手元を見て、
「へしっぺらなんか持って、わなにかさまぁ行くのか?われが?」
「あ、はい」
へしっぺら?
「そうかぁ。子供なのにえらいなぁ。でもはて?なんでこんなとこにいるだぁ」
「あ、いえ」
「はー、そうか迷ったか。わなにかさまだもんなぁ」
「あ、はい」
わなにかさまだもんな?
「うらもわなにかさまいくとこだ。車だ。乗ってけ」
「あ、はい」
おじいさんはぼくが来たのと反対のほうへ歩きかけて、
「あ、そうだ」
とぼくに背を向けると茂みに向かって立ちションを始めた。

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