アーティストビジネスの役割について考える (2)

今回も記事にアクセスしてくださりありがとうございます。
「アーティストビジネスの役割にについて考える(1)」の続きとして、早速次の仕事のエピソードに移ろうと思いましたが、前回のアイドルの仕事の説明があまりに概念的すぎていたので少し補足させていただきます。

求められる役割にフィットできなかったことは先述の通りですが、
では実際に自分がやった具体的な業務はなんだったか、少し触れます。
⓪アーティストの再ブランディング(やろうとしただけ)
①ウェブニュースの作成と送付、掲載後の効果検証
②インタビューの仕込み、立ち会い
③配信オペレーション
④公式SNSへの投稿(情報出しのみ)
⑤YouTube動画の構成(簡易的なもの)
⑥ブランドロゴのディレクション
⑦会議資料、アーティスト資料作成

ざっとこんな感じだったと思います。
レコード会社的な分業でいうと、
①はデジタル部、②は宣伝部またはA&R、③はデジタル部のオペレーション担当、④はデジタル部またはA&R…といった区分がポピュラーです。⑤もざっくりしたものであればA&Rが作りますが、人によっては100%外注する領域です。そして⑥はどっちかというと制作担当の領域です。

敢えて⓪と記載した部分ですが、これは自分がA&Rとしては必ずやりたい/やるべきと拘っていた部分でした。ただ、これを定めることを重視していないチームにおいては、このタスクは無意味です。実際、これは決まらないまま流れました。

ほとんどが音楽業界出身者ではないスタッフのチームだったので、基本的には、「これが必要だ」となったら対処療法的に”できる人が動く”といったフローでした。
この領域はどこの部署(担当)に相談しなくちゃいけない、といった社内的な筋通し等は必要ない分、楽な部分も多々ありました。

ただ、自分がやっていたことはとにかく、上記のような点、点、点・・・・・
全体がつながっていくような感じや連なってまとまっていくような結束感、自分がそこできちんとピースになっているような感覚がついぞ持てず、当時はそれに対して、疑問を持っていたわけです。アーティスト自身ともっと会って意思疎通しないとダメだ、とも思っていました。(コロナ禍だし地方なのでそれは無理です)
明らかに既存の役割イメージに囚われた人間の思考です。
まずはその時自分ができることをやればいいし、点は点でもやることやってれば良かったのかもしれないのに、です。

こういった思考に陥ったボトルネックが実は「ギャラ」にもあります、が、
これに関しては、本筋から少しずれてしまうので、”アーティストビジネスにおいてのギャラの考え方”、という別テーマで書きます(生々しい話が多いのでクローズ記事にするかもしれません)

さて、、このプロジェクトが最終的にどうなったかというと、アーティストは数枚アルバムをリリースし、古参のファンからは変わらず評価され、新規ファン獲得とまでは言えないまでも、以前とは違う露出が図れたりと、総じてマイナスはなかったように思います。
よくレコード会社で問われるパッケージ売上やストリーミングバリュー、SNSリアクションについては、メジャーではない新体制で手がけたこともあってか、あまり数字的な追求をされませんでした。これはマネジメント会社とレーベル側が基本的には良好な関係を築いていたことは大きく、アーティストビジネスの新しい取り組み方、そこでのささやかな成功例を見たような気分でした。
要は、どこをゴールに設定するかというところですが、必ずしもそれが最初から明確に描かれていなくても、結果が悪くなければプロセスも良しとされて、また次に進めるチャンスを得られることもある。ラッキーもあるかもしれませんが、それくらいの、プレッシャーを持ちすぎない感覚も大切なのかもしれないと思った次第です。

自分がどうなったかというと、途中でA&Rを降りてウェブの宣伝まわりを担当していました。なので最後の方は、決定事項を受けてプレスリリースを作成して送信するという限定的な仕事を気負わずやり、業務を全うしました。

役割への固執=下手なプライドから解放された後は、とても気持ちが軽かったという記憶です。

この経験を経た上で、筆者は一年後くらいに次の仕事に取り掛かりますが、アーティストビジネスは全てがケースバイケース。失敗から学べることはどれだけあるのか、、?

次回に続きます。

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