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12月14日、"アラスカのアダムズ"が創り出す、大自然、大気... 圧倒的な音響の波に、意識は研ぎ澄まされてゆく。

ドナルド・ナリーの指揮、ミシガン大学のパーカッション・アンサンブルと室内楽科の面々、そして、ジャック四重奏団、クロシングのコーラスによる、ジョン・ルーサー・アダムズの『シラ、世界の息吹』。
cantaloupe music/CA21177

イヌイットの人々は、天候、そして、世界、さらに、意識までをも一括りに"シラ"と呼ぶのだとか... 物質世界にどっぷり浸かっている我々にとって、それはなかなか捉え難い感覚だけれど、精神性を孕んだ大気?そんな認識だろうか... イヌイットの人々は、より一体的に自らと自らを取り巻く環境を見つめているのだなと、興味深く感じ、何より、感慨深いなと... という"シラ"を、音楽で表現したのが、"アラスカのアダムズ"こと、ジョン・ルーサー・アダムズ(b.1953)の『シラ、世界の息吹』。

パーカッション、弦楽、管楽が、それぞれ荘重に奏でられ、巧みに響きを重ね、融け合い、"アラスカのアダムズ"らしい雄大なうねりを創り出し、そこにヴォカリーズが神々しさを加える。そうして、1時間弱に渡り、切れ目なく織り成される音響の波(8つのトラックに分けられている... )。それは、音楽という形を越えて、聴く者を包み、揺さぶり、世界の息吹を実感させる... イヌイット的に捉えた壮大なる自然を響かせる!

そんな"アラスカのアダムズ"による"シラ"を聴かせてくれた、ナリーの指揮、ミシガン大、ジャックQ、クロシング... 彼らの、個を消して、音楽に同化する一体感!その純度がただならず、まるでデジタルに生成されたサウンドのような印象すら生み出す。いや、人間味を消してこそ鮮烈なる大自然は創出されるのか... 感慨深いパフォーマンス...

さて、『シラ、世界の息吹』は、2013年、ニューヨーク、リンカーン・センターの野外広場で初演... てか、野外ってのが凄い!けど、ニューヨークか... "シラ"を感じられる大自然の中で聴いてみたいなと... 一方で、大自然から遠く離れても、大自然を創出できてしまうのが、"アラスカのアダムズ"の"シラ"の凄いところ。

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