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9月18日、北のオペラの王様たち!中心から離れても、この充実っぷり!魅了されます。

チェコのバリトン、トマーシュ・クラールが、ヤロスラフ・ティエル率いるヴロツワフ・バロック管の伴奏で歌う、バロック期、ヨーロッパ北面のシーンを賑わせたアリアの数々... "KINGS IN THE NORTH"。

ロンドンの音楽シーン、ポスト・ヘンデルの時代を担ったアーン(1710-78)の『アルフレッド』序曲で幕を開け、ロンドンでも研鑽を積んだ"スウェーデンのヘンデル"、ルーマン(1694-1758)に、ハンブルク、ゲンゼマルクト劇場(若きヘンデルがその第一歩を踏み出した... )を彩った作曲家たち、シュールマン(1672-1751)、カイザー(1674-1739)、テレマン(1681-1767)、ドレスデンの宮廷楽長、ハイニヒェン(1683-1729)、王立音楽アカデミー(ロンドンのオペラ・カンパニー... )におけるヘンデルのライヴァル、アリオスティ(1666-1729)、そして、もちろん、ヘンデル(1685-1759)も... いや、とにかく盛りだくさんにアリアを歌う、"KINGS IN THE NORTH"。

いや、バリトンによるバロックのアリア集というのが、マニアック?なところに、ロンドン(18世紀切っての国際音楽マーケット!)に、ハンブルク(ヴェネツィアに続いて公開のオペラハウスをオープン!)、ドレスデン(バロック期、アルプス以北で最もゴージャスな音楽環境を誇った!)という、イタリアやフランスのバロックのメインストリームではない周縁のアリアを取り上げるというマニアックさ... が、この周縁が侮れなかった... ヨーロッパ北面のオペラ・シーンを丁寧に拾い上げる興味深さたるや!

イタリアの最新のスタイルを意識しながらも、北のセンスがそこはかとなしに感じられるアリアの数々... バリトンという声域もあるのだろうけれど、それら、落ち着いて聴こえ... そこからこぼれ出す瑞々しさ、印象的で、絶妙にしっとり... けど、サラりとしているのが北面流。清々しいのです!イタリアやフランスとは、またひと味違う魅力がそこに!

という"KINGS IN THE NORTH"を聴かせてくれたクラール。バリトンではあるのだけれど、テノールのような軽さが印象的で... 何より、癖の無い落ち着いた声の明朗さに魅了される!何だろう、バロックにして清々しさが感じられる!そこに、ティエル+ヴロツワフ・バロック管が、軽快に北面のバロックを響かせれば、清々しさは増し増し!アリアの数々に織り込まれる、ヘンデルの舞曲やテレマンの導入曲なども効いていて、様々に聴かせる... で、最後に取り上げられるバッハが捻りを効かせる?

歌われるのは、世俗カンタータ、第214番、『太鼓よ轟き、ラッパよ響け』からのアリア、「われらが冠りなる王妃よ」。オペラとは無縁に感じられるバッハだけれど、世俗カンタータには、オペラへの準備が見出されるような... そのアリア、何とも朗らかで、バッハも負けてないなと... そんなバッハも含め、北面総力戦、見事!


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