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12月6日、"Signor Gaetano"、ドニゼッティとはどんな作曲家だったのか?改めて見つめ直すアリア集の興味深さ...

メキシコからやって来た、新たな逸材、テノール、ハヴィエル・カマレナが、リッカルド・フリッツァの指揮、ピリオド・オーケストラ、リ・オリジナリの演奏で、ドニゼッティのアリアを歌う"Signor Gaetano"。
PENTATONE/PTC5186886

ドニゼッティでテノールのアリアと言えば「人知れぬ涙」!は、もちろん歌われるのですが、必ずしも「名アリア集」という雰囲気ではない、"Signor Gaetano"。1幕モノのブッファ、『ベトリー、またはスイスの山小屋』のアリアに始まって、上述の『愛の妙薬』を挿み、『ルデンツ家のマリア』、『ロベルト・デヴリュー』、『脂の木曜日』、『ドン・パスクワーレ』(こちらは定番!)、『マリーノ・ファリエーロ』、『カテリーナ・コルナーロ』、『イングランドのロスモンド』と、普段、あまり顧みられない演目を中心に、アリアのみならず、ひとつのシーン(だから、合唱があちこちで登場し、盛り上げる!)から切り出して構成される。単にテノールの美声を楽しもうというではなく、ガチでドニゼッティに迫るのか...

そもそも、ドニゼッティ(1797-1848)のアリア集というのが、新鮮!ロッシーニ(1792-1868)、ベッリーニ(1801-38)とともに、ベルカント・オペラの三大巨匠として認識されるも、2人の天才を前に、ちょい地味?というか、暗め?みたいなイメージがあり... いや、それ込みで、魅力なのだなと、知らしめてくる、"Signor Gaetano"の総合力。名作、人気作ばかりでなく、いつもと違う場所に視点を持っていき、作曲家の全体像を捉えようとして見えてくるもの、なかなかに興味深い。で、また新鮮!

そして、ドニゼッティ尽くしで抽出されるドニゼッティの音楽性... ベルカントならではの突き抜ける感覚に圧倒されながら、どこか仄暗さを抱えての深み... 自らの貧しい出自に強いコンプレックスを持っていたというドニゼッティの、ある種の闇がもたらす深みだろうか?天才として恵まれた環境ですくすくと育ったロッシーニの明朗さ、ベッリーニの流麗さとは違う、その魅力、よりロマン主義を体現し、迫ってくる。

そんな、"Signor Gaetano"を歌い上げる、カマレナのテノール!圧巻の高音にテンション上がる!一方で、その高音にフっと深い表情を見せて、惹き込まれて... いやー、テノールを堪能... そして、フリッツァの指揮、リ・オリジナリの演奏!ピリオドによるドニゼッティの興味深さ... 情景がより明晰になる感覚があり、ドニゼッティをまた新鮮に響かせる!いや、稀有なアリア集、多くを喚起される!

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