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11月4日、ヴァイルとショスタコーヴィチの1930年代、不穏な時代... 困難な状況を跳ね返し書かれた交響曲。

イスラエルの新鋭、ラハフ・シャニ率いるロッテルダム・フィルの演奏で、ヴァイルの2番に、ショスタコーヴィチの5番... 1930年代の交響曲、2曲。

1920年代、旧時代から解放されての束の間の自由を謳歌したヴァイマル共和国時代(1918-33)を象徴する『三文オペラ』。1928年、ベルリンで初演され、大成功!作曲家、ヴァイル(1900-50)は、一躍、時代の寵児となるものの、ユダヤ系だったために、1933年、ナチスが政権を掌握すると活躍の場を奪われ、パリへと移り、さらに2年後、アメリカへと渡ることに... で、ここで聴く、2番の交響曲は、1934年、パリで書かれた作品...

その同じ年、ショスタコーヴィチ(1906-75)は、レニングラード(現在のサンクト・ペテルブルク... )にて、オペラ『ムツェンスク郡のマクベス夫人』を上演し大成功!その評判は瞬く間に世界へと広がり、西側では、社会主義リアリズムのアンサーとして受容されるも、そのリアリズムを追求するドラマ、音楽を、スターリンは理解できず、初演から2年後の1936年、『プラウダ』の社説で批判を展開、ショスタコーヴィチは窮地に... この窮地を打開するため、渾身の力を籠めて書いたのが5番の交響曲(1937)。

普段、あまり並べることのない、ヴァイルとショスタコーヴィチだけれど、同世代であり、場所は違えど危機の時代を生きた作曲家... というあたりを改めて考えさせてくれるシャニ+ロッテルダム・フィル。いや、ヴァイルとショスタコーヴィチを並べることで、全体主義が世界を覆い出す1930年代の不穏さ、炙り出す!炙り出されて感じられるリアル!

それを可能とするのが、大胆にして繊細なシャニの指揮... 両極にあるイメージのヴァイルとショスタコーヴィチを、その鋭敏なアプローチによって、巧みにバランスを取る!元来、軽い、ヴァイルは、より重々しく、シリアスにその時代を響かせ、ショスタコーヴィチは、時代の重々しさから解き放ち、透明感を以って、作曲家の葛藤を丁寧に捉える。

そんなシャニに応えるロッテルダム・フィルが、またどこか醒めた視点で両曲を奏で... ステレオタイプに囚われることなく、両曲とも瑞々しく鳴らし、絶妙!背景にある悲劇性をことさら強調することなく、そうあってこそ聴こえてくるリアル、迫ってくる。

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