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8月8日、コロナ禍のロックダウンの中、録音された、楽聖、最晩年の弦楽四重奏曲の重みと達観... 感慨に包まれた...

ヴァイオリンのヴィルトゥオーゾ(現代における、最高のひとりじゃないかと... )、ジェイムズ・エーネスが率いる、エーネス四重奏団、ベートーヴェンの後期の弦楽四重奏曲のシリーズ、その最後を飾る、15番と16番。

ベートーヴェン(1770-1827)の死の前年、1826年に作曲された最後の弦楽四重奏曲、16番と、1825年に作曲された、15番が取り上げられるのだけれど、最晩年であることを意識して聴けば、やっぱり、感慨深い... 栄光に輝く業績の一方で、困難の中を歩んだその人生... 歩んだ先に、15番と16番、その境地たるや!

特に印象深いのが、15番、3楽章、「リディア旋法による、病より癒えたる者の神への聖なる感謝の歌」(という副題からして、もう、ね... てか、今こそか?)の、時代を超越するような佇まい(何だか映画音楽みたいなのだよね... )。魂はもう違う場所にある?そんな達観した表情、聴く者を揺さぶります。

からの16番は、思いの外、真っ当なところが、また心に沁みる。
とかく型枠から逸脱してゆくようなベートーヴェンの晩年だったわけだけれど、最後、あえて型に戻ってゆく姿勢が、興味深いなと... いや、どこか若さを取り戻し、かつてへと還ってゆくようなところもあるのか?そんな最後が愛おしくなってしまう。

という、ベートーヴェンの15番と16番を聴かせてくれたエーネスQ。いつも通り、澄み切って、それでいて、何か次元を超えてゆくような、スペイシーさもあって... 困難な中で録音されたからこその研ぎ澄まされる感覚があって、また、思いも犇々と伝わり... なればこそ、今の再びの困難な状況に響く!そして、シリーズの最後という感慨...
全てをひっくるめて、凄かった。

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