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11月8日、ビザンツ聖歌とラフマニノフの『晩祷』... 東方教会における教会音楽の大きな流れを捉え、深い音楽世界、響かせる!

シモン・ピエール・ベスティオン率いる、フランスの声楽アンサンブル、ラ・タンペートが、ビザンツ聖歌を織り交ぜながらラフマニノフの『晩祷』を歌う大胆なアルバム、"NOCTURNE"。

第一次大戦(1914-18)が勃発した翌年、1915年に作曲されたラフマニノフ(1873-1943)の『晩祷』。それは、ロシア革命の2年前の作品で... ソヴィエトの成立により宗教が全否定されたことを考えれば、連綿と紡がれてきた東方教会における教会音楽の最後の作品、なのかも… というラフマニノフの『晩祷』に、ビザンツ聖歌を差し挿んでしまう、"NOCTURNE"。

ビザンツ聖歌は、グレゴリオ聖歌よりも時代を遡り(グレゴリオ聖歌の成立に影響を与えている... )、初期キリスト教会の典礼音楽の雰囲気(古代の残照とすら言える... )を伝える独特な聖歌... 東方教会における教会音楽のベースになったもの... つまり、ラフマニノフの『晩祷』の源流となる。

で、源たるビザンツ聖歌は、なかなかにして、プリミティヴ。アルバムの最初を飾る聖歌のオリエンタルさ、男声の重低音(ドローン)には、慄きすら覚えてしまう。一方のラフマニノフは、女声も加わり、やわらかにして光に包まれるような音楽が広がり、ビザンツ聖歌からすると、洗練の極みを味わう。となると、この2つ、混ぜちゃって良いのだろうか?

"NOCTURNE"、その第一印象は、混ぜるな危険... が、聴き進めてゆくと、プリミティヴ(ビザンツ聖歌)と洗練(ラフマニノフ)が、波のように寄せては返し、歌い紡がれ、独特な空気感を創り出す!やはり、あるのかもしれない、東方教会の東方性のDNA... ビザンツ(第二のローマ)からロシア(第三のローマ)へのリレーを見出し、西欧とは異なる感性、引き立つ。

でもって、ベスティオン+ラ・タンペートが凄い!プリミティヴと洗練をひょいとつなげてしまう身の軽さは、フランスならではの音楽性か... で、それぞれの魅力を活かしながら、源から海へと至る壮大な流れ、懐深く歌い上げる!歌い上げて、時代の隔たりを超越し、聴く者をどこか知らない世界へと導くよう... マジカル ...

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