10月28日、サヴァールがロマン主義をノックする... イマジネーション、掻き立てる「未完成」と「グレイト」!
古楽の巨匠、ジョルディ・サヴァールが率いるピリオド・オーケストラ、ル・コンセール・デ・ナシオンの演奏で、シューベルトの「未完成」と「グレイト」を取り上げる2枚組、"Transfiguration"。
Alia Vox/AVSA9950
2020年、ベートーヴェン・イヤーに合わせてのベートーヴェンの交響曲全集(1番から5番、6番から第九、という2つに分けてのリリース... で、コロナ禍もあって、後半のリリースが今年の初めにずれ... )のリリースから間もないところに、シューベルトの交響曲!味わい深くガンバを弾き、古楽を牽引してきた巨匠が、ロマン主義に踏み込むという感慨深さ... 他のピリオド系のマエストロたちに比べると、ちょっと遅かった印象もあるけれど、じっくりと時間を掛けて辿り着いたロマン主義は、感慨深いもの、ある!
で、まずは、「未完成」。サヴァールならではの味わい深さ、古楽でなくったってしっかりと効いている!いや、味わい深い「未完成」は、シューベルトのスケールを越えて、ブラームスを思わせる豊潤さ、引き出し、瞬間、マーラーすら垣間見える?そんなシューベルトの先駆性、ぶわーっと溢れ出し... いや、驚いた!驚いて、腑に落ちる。この先駆性に自ら恐れ戦き、2楽章で筆を断ってしまった?なんて、妄想すると、刺激的...
からの、「グレイト」は、味わい深さとともに、キレが凄い!つまり、ル・コンセール・デ・ナシオンのメンバーひとりひとりの演奏が水際立っていて... なればこそ強調されるピリオド楽器の味!いや、癖か... そこから発せられるリアルな19世紀感の生々しさたるや!「グレイト」のタイトルのままに、輝かしいイメージのある交響曲だけれど、そこをあえて艶消し加工?どこか粗忽で、何だか埃っぽく、グレイトじゃない... シューベルトの少年時代、ナポレオン戦争(1803-15)の戦場を突っ走ってゆくような、そんな感覚だうろか... いつもグレイトさとは違う拍力で迫ってくる!
サヴァールは、「未完成」から「グレイト」に、変容(transfiguration)"を見出したとのこと... その新しい視点、おもしろいなと... で、"Transfiguration"からは、"変容"、聴こえてくるのかもしれない。未来へと踏み出してしまい訳が分からなくなってしまった未完の音楽から、今、リアルを生きる音楽へ... いや、変容というよりは、成長か?あるいは、早過ぎる死の予兆と、その運命への抵抗... いや、凄くイマジネーションを掻き立てられる「未完成」と「グレイト」だった。
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