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10月26日、まさに、グランドなオペラ、『悪魔のロベール』。長大にして、盛りだくさん、19世紀的なるもののが詰まった、テーマパーク!

マルク・ミンコフスキの指揮、ボルドー国立オペラ、ジョン・オズボーン(テノール)のタイトル・ロールで、グランド・オペラの時代の幕を開ける、マイアベーアのオペラ『悪魔のロベール』。

フランス革命?何でしたっけ?と帰ってきた貴族たちによる復古王政が七月革命(1830)により終わり、新たに始まったブルジョワたちによる七月王政(1830-48)... 何と言いますか、成金趣味っぽい似非貴族主義?そんな時代を象徴するのが、グランド・オペラだったか... イタリアのベルカント・オペラがヨーロッパ中を席巻する中、フランス・オペラの伝統をガッチリ守り、その伝統を巨大化させた、まさに"グランド"なオペラ!そんなグランド・オペラの幕開けとも言える作品が、1831年、パリ、オペラ座で初演され大成功したマイアベーア(1791-1864)の『悪魔のロベール』!

ノルマンディーの公女と悪魔の間に生まれたロベールが、父=悪による誘惑を退け、亡き母の愛(遺言)に救われる物語(ファウストに似ている... )。それを、5幕立ての長丁場で、片手間じゃないバレエ・シーン付きで、大合唱が盛り上げて、盛り盛りで... いや、"グランド"たる圧が凄い... 凄いけど、癖になる... てか、聴き所、満載!聴き所の百貨店やぁ~

で、その百貨店感、"グランド"なスケール、単に盛り盛りで規模が大きいというだけでなく、ドイツ・ロマン主義(ウェーバーの『魔弾の射手』を思い起こすおどろおどろしさ... )、イタリアのベルカント(登場人物たちが歌うベルカントを感じるエールの流麗さ!)、フランスの伝統(リュリ以来のドラマを大切にした音楽... もちろん、華麗なるバレエも!)を巧みにひとまとめにして生まれる総合感もあるなと... ドイツで学び(ウェーバーとともに、フォーグラーに師事していた... )、イタリアで修業(各地の劇場でイタリア・オペラを作曲し成功!ロッシーニの支援でパリ進出を果たす!)し、器用にフランスの求め(=伝統)に応えられたマイアベーアならではの汎ヨーロッパ・スタイルが生む百貨店感、"グランド"なスケールは、武器!

そんな『悪魔のロベール』を聴かせてくれた、ミンコフスキの指揮、ボルドー国立オペラ... 盛り盛りの長丁場、実際は処理に苦慮するところもあるだろうけれど、最後まで緊張感を切らさず、密度あるドラマとして描き切るミンコフスキ、さすが!で、ボルドー国立オペラのオーケストラが、19世紀味を大事に表情豊かな音楽を織り成していて、思いの外、魅力的!そして、ロベールを歌うオズボーン(テノール)を筆頭に、流麗にしてドラマティックな歌を聴かせてくれた歌手陣もすばらしく、合唱団も盛り上げて、すっかり悪魔のロベール・ワールドを堪能してしまう。

いや、『悪魔のロベール』、おもしろかった!悪魔が彩る物語の仄暗さ、19世紀ならではのゴシック感、イイ!特に3幕... 悪に堕ちた尼僧たちの亡霊が、騎士たちを誘惑するために踊る、バッカナール!からの魔女味見せる幕切れの合唱!この劇画調のダーク・サイド感、イカニモな19世紀風味に、テンション上がる!


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