見出し画像

8月25日、ヴァイオリンを依り代に、何かを召喚?21世紀のヒルデガルトか?

ドイツのヴァイオリニスト、カロリン・ヴィトマンが、ヒルデガルト・フォン・ビンゲンの聖歌に導かれながら、近現代とバッハの独奏作品を弾く、大胆な一枚、"L'Aurore"。

ヴァイオリンで弾かれるヒルデガルト・フォン・ビンゲン(1098-1179)の単旋律の聖歌「聖霊は生の源の火よ」で始まり、エネスク(1881-1955)の協奏的幻想曲(1932)、ジョージ・ベンジャミン(b.1960)の3つのミニアチュール(2001-02)、イザイ(1858-1931)の無伴奏ヴァイオリン・ソナタ(1924)、5番、再びヒルデガルトの聖歌を弾いてからの、ヴァイオリン独奏作品の金字塔、バッハ(1685-1750)の無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ(1720)、2番が取り上げられる、"L'Aurore(夜明け)"。

いや、ヴァイオリンのヴィヴィットなサウンドに、カロリンの鋭い演奏が相俟って、まるでヒルデガルトが体験した神秘が、今、そこに出現してしまうような、そんな雰囲気、というか緊張感?見せる"L'Aurore"。ヒルデガルトの素朴なメロディーは、中世の幻影を見るようで... 対し、何か憑かれたように自由に奏でられてゆく近現代の作品の圧倒的な様たるや!

エネスクの協奏的幻想曲、思いの外、長大で、幻想曲(≒即興曲)を突き詰めてくるような、圧巻のファンタジー!で、ヒルデガルトの後の、そのテーマの変奏っぽい出だしがまた印象的... 続く、ジョージ・ベンジャミンの3つのミニアチュール(小品)は、俳句っぽい構成が、乙... からの、イザイの5番の無伴奏ヴァイオリン・ソナタの伸びやかさは、目が醒める!で、再びのヒルデガルトを挿んでの、締めのバッハのラスボス感の半端無さ...

2番の無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ、バッハにしてはエモい(最後のシャコンヌは、特に!)。てか、元々は変奏曲であるパルティータならではの、めくるめく展開される音楽に触れていると、カロリンのヴァイオリンに、憑依のようなもの、感じてしまう。いや、ヒルデガルトに始まって、イマジネーションを掻き立てる、"L'Aurore"のただならなさ...

そのただならなさを生み出すカロリン!12世紀から21世紀まで、見事に弾き切って... いや、弾くというより、スコアから音を解き放つような感覚すらあって... 解き放って、何かを招喚してしまうような、秘儀的な空気感すらある。音楽を聴くというより、もはや意識の夜明け、聴く者に覚醒を促すカロリン、21世紀のヒルデガルトか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?