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12月17日、脱西洋の魔法使い、パーチの日本とアフリカ... 『怒りの妄想―夢と妄想の祭典』。

ドイツ、気鋭の現代音楽アンサンブル、ムジークファブリークの演奏と歌で、アメリカ、実験音楽の旗手、ハリー・パーチのシアター・ピース『怒りの妄想―夢と妄想の祭典』。
WERGO/WER6871

1966年に完成された、ハリー・パーチ(1901-74)のシアター・ピース『怒りの妄想―夢と妄想の祭典』(初演は1969年、ロサンゼルス、UCLAプレイハウスにて... )。序と2幕からなり、1幕は、能、『敦盛』をベースに、2幕は、エチオピアの民話『正義』をベースとする奇作。奇作だけれど、1幕が悲劇で、2幕が笑劇という、古代ギリシアにおける上演のフォーマットを引用している?みたい... 脱西洋のパーチにして、西洋の源に還るところ、実に興味深い。いや、古代ギリシアは、"西洋"が構築される以前か...

で、その音楽です。いつも通りのパーチ節が炸裂!1幕の始まりは、まるで声明... 日本の雰囲気、醸し出す。が、どこか調子外れ... で、護摩焚きやら、お囃子やら、いろんなものがごった煮になって、パーチ流のユルさで彩る。そして、なかなか熱っぽい2幕への導入があり、一気にアフリカへワープ!いや、『ライオン・キング』始まった?!くらいに分かり易いアフリカっぽさ!1幕からは一転、より色彩的になり、盛り上がる!

という、パーチによる日本とアフリカを形作るのが、民俗楽器を思わせるパーチが生み出したヘンテコな楽器の数々... そこから放たれる、それまでの平均律から解き放たれたサウンド(つまるところ、調子の狂った... )から繰り出される、新しい音楽世界!1960年代のヒッピー・カルチャーにも裏打ちされているのか、お花畑感にも包まれて、何だかハッピー!

いや、パーチならではの脱力系サウンドが生む、不思議な心地良さ... きっちりとした音楽を聴き続けてきて(今年もいろいろ聴いて参りましたァ... )の、このユルさは、かえって感慨深い。で、そのユルいところに身を浸して、ジワジワとくる陶酔感!ギンギンではないけれど、サイケデリック!1960年代ならではの気分が、21世紀からすると、凄く、新鮮。

という『怒りの妄想―夢と妄想の祭典』を活き活きと繰り出すムジークファブリーク!現代音楽のエキスパート集団だけれど、ユルい系の現代音楽でも、卒なくいい味醸し... でも、ユルいことに甘んじない!パーチの音楽を、どこか解析的にも捉えていて、隙が無い!だから、様々なイメージが喚起され、刺激的、おもしろい!

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