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10月25日、プリマ、ポーリーヌ・ヴィアルドが歌ったアリアの数々... 華やかな19世紀の記憶を呼び覚ます...

フランスのメッゾ・ソプラノ、マリーナ・ヴィオッティが、クリストフ・ルセ率いるレ・タラン・リリクの伴奏で、19世紀を彩ったプリマ、ポーリーヌ・ヴィアルドが歌った魅惑的なアリアの数々を取り上げる、"A TRIBUTE TO PAULINE VIARDOT"。

ポーリーヌ・ガルシア・ヴィアルド(1821-1910)。
父はロッシーニの信頼も厚いスペイン出身のテノール、マヌエル・ガルシア(『セヴィーリャの理髪師』の初演でアルマヴィーヴァ伯爵を歌っている!)で、姉は伝説のプリマ、マリア・マリブラン(1808-36)という、著名な歌手一家に生まれたポーリーヌ。父から声楽とピアノを学び、1839年、ロンドンにて、ロッシーニの『オテロ』のデスデモーナでデビューを果たし、一夜にしてスターに!翌年、パリ、イタリア劇場の監督、ヴィアルドと結婚。パリを拠点にヨーロッパ中で活躍。そして、その情感に富む歌声と確かな演技力は、同時代の作曲家たち(ベルリオーズ、グノーは、特に!)はもちろん、広く芸術家たち(ツルゲーネフは、ポーリーヌを追ってロシアからパリまでやって来てしまった!)にインスピレーションを与えた。

という、ポーリーヌが歌ったアリアで綴る、"A TRIBUTE TO PAULINE VIARDOT"。1859年、パリ、リリック座、ポーリーヌがオルフェを歌ってリヴァイヴァルされたグルックの『オルフェとユリディス』(ベルリオーズ編)のアリアに始まり、ロッシーニ(1792-1868)、ベッリーニ(1801-35)、ドニゼッティ(1797-1848)のイタリアからやって来たベルカントの巨匠たちのアリア、4曲に、アレヴィ(1799-1862)、ベルリオーズ(1803-69)、グノー(1818-93)、サン・サーンス(1835-1921)、マスネ(1842-1912)という、19世紀、フランス音楽を担った作曲家たちのエール、5曲... いや、ポーリーヌが生きた時代が浮かび上がってくるラインナップ... 多彩!

多彩だけれど、それぞれのナンバーからは、聴衆を魅了し、多くの作曲家たち、芸術家たちにインスピレーションを与えた、ポーリーヌの歌声がどんな感じだったか聴こえてきそうで... 特に、ポーリーヌに心酔していたベルリオーズ(『トロイアの人々』から、ディドンのモノローグとエール「ああ、私は死んでしまうのでしょう... さようなら、自慢の町よ」)、グノー(『サッフォー』からサッフォーのレシタティフとエール「不滅のリラよ」)のナンバーの、情感に溢れるまくるところに触れると、イマジネーションを掻き立てられる!何だろう?時空を越え、19世紀を彩ったプリマのパフォーマンスを追体験できているような、ヴァーチャル感も...

そんな、"A TRIBUTE TO PAULINE VIARDOT"を聴かせてくれたマリーナ・ヴィオッティ(メッゾ・ソプラノ)!マエストロ、ヴィオッティの娘さんなんですね... 知らなかった... は、ともかく、その流麗な歌い、艶やかな表情、まさに古き良き19世紀を醸し出す!でもって、ポーリーヌが歌ったナンバーを辿り、かつてのミューズを召喚してしまうような、そんな雰囲気も漂い出し、幻惑されます。いや、この感覚、素敵。

そして、ルセ+レ・タラン・リリク!いつもながらの息衝く演奏は、19世紀モノでも、十二分に効いていて、惹き込まれる!で、アリアの合間に、ロッシーニの序曲の中でも特にシンフォニックな『セミラーミデ』序曲、ドラマティックにして堂々たるドニゼッティの『ラ・ファヴォリート』序曲が取り上げられて、これがまたすばらしく、盛り上がる!19世紀のオペラの序曲って、熱い!最高!

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