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2月6日、ピアノのならではの澄み切ったサウンドで、アルメニアが還元されてゆく... "temps d'arménie"。

アルメニアにルーツを持つ、ベルギーを拠点とするピアニスト、ロランス・メフタリアンが、アルメニアの苦難の歴史の只中を生きた作曲家、コミタスに、現代のベルギーの作曲家たちによる、アルメニアをモチーフとした作品を弾く、"temps d'arménie"。
cypres/CYP4660

独自の文化を持つアルメニアの教会音楽を学び、またアルメニアの民謡を収集して歩き、そして、アルメニアの悲劇に直面し、生還した、アルメニアを体現するような作曲家、コミタス(1869-1935)の「鶴」、「歩け、輝け」、「春が来た」、「杏」の歌、4曲をピアノ(サルシャキンのアレンジ)で... 現代のベルギーの作曲家たち、ファフシャン(b.1960)の『アルメニアの本』、ドゥルーズ(b.1954)の『ハヤスタン』、ルドゥ(b.1960)の「石と蜂蜜のフレーバー」という、アルメニアを題材としたピアノ曲が取り上げられ、最後、アルメニアの民俗楽器、ドゥドゥク(オーボエに似た木管楽器)とピアノによるファフシャンのモノディ1aで締める、"temps d'arménie"。

コミタスならではの、何とも言えぬイノセンスさ、儚さに心を掴まれ、アルメニアを巧みに取り込み、現代というフィールドで洗練された響きを繰り出すベルギーの作曲家たち... いや、もう、とにかく、美しく、秀逸なのです、"temps d'arménie"、アルメニアの時... 独自の音楽文化を育んできたアルメニアならではのトーン... やっぱりオリエンタルで、それでいて素朴で、ちょっと物悲しい表情、ピアノにスーっと溶けて、ピアノならではの澄み切ったサウンドで、アルメニアが還元されてゆく妙... ベルギーというフィルターも効いているか?洗練された音楽に惹き込まれる。

という、"temps d'arménie"を聴かせてくれた、メフタリアン!そのクリアなタッチ、まるでアルメニア高原を流れる清流を思わせて... その響きの美しさに吸い込まれそう... もちろん、悲劇を背景としたエモさもしっかりと表現、聴く者に迫るところも... そして、最後に吹かれるドゥドゥクの深く悲し気な音色... サックスのような、尺八のような... ズーンと地の底から響き出すような重みのある響きに、アルメニアの苦難の歴史、感じられ、揺さぶられる。いや、今、改めて、アルメニアに興味を掻き立てられる、アルメニアの時... 魅了されました。

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