10月7日、シンプルに美しい歌声!そこから見えてくる、18世紀、ドイツ語圏の歌曲のパノラマ!
イギリスのソプラノ、キャロリン・サンプソンが、ピリオドのピアノのヴィルトゥオーゾ、クリスティアン・ベザイデンホウトの伴奏(1805年製、アントン・ヴァルターのレプリカ… )で歌う、ハイドンに、モーツァルトに、18世紀、ドイツ語圏の歌曲の数々... "TRENNUNG"。
帝都、ウィーンを彩ったハイドン(1732-1809)、モーツァルト(1756-91)の歌曲に、マクデブルク大聖堂のオルガニスト、ヘルビング(1735-66)、ブラウンシュヴァイクの宮廷で仕事をしたフライシャー(1722-1806)、シュテッティンのオルガニスト、ヴォルフ(1707-89)という、知られざるドイツ北部の作曲家たちによる歌曲が歌われるのだけれど...
いや、始まりのヘルビングの「モンタンとララゲ」から惹き込まれる。それは、歌曲というより、もはやカンタータ!10分を越える規模で、様々な表情が次々に織り成され、聴き応えが半端無い... ということで、知られざるドイツ北部の作曲家たちが侮れない!ヘルビングのみならず、フライシャーのメランコリック、ヴォルフの仄暗さには、シューベルトを予感させられ... いや、ドイツ・リートの源流を見出す思い...
そんなドイツ北部の作曲家たちと一緒に聴く、ハイドン、モーツァルトは、その明快さ、花やぎ、より引き立って感じられ、同じドイツ語でも、漂い出す空気感、ドイツ北部とは違うなと... 中央における洗練された古典主義と、そのローカル性にロマン主義の色合いが浮かびつつある周縁の関係性... なかなか興味深いパノラマが広がってゆく。
と、示唆に富む"TRENNUNG"なのだけれど、何と言ってもサンプソンのシンプルに美しい歌声!軽やかにして、詩情に富でいて... で、ヘルビングの「モンタンとララゲ」に始まり、ハイドンのカンタータ『ナクソスのアリアンナ』で締める構成!最初と最後でガツンと歌い上げて生まれる充実感、歌曲集であることを凌駕していて、圧巻。
で、ベザイデンホウトのピアノ(1805年製、アントン・ヴァルターのレプリカ... )が、サンプソンに絶妙に寄り添い、これが、また魅惑的で... いつものドヤ感は抑え、繊細にサンプソンの声に反応し、ともにひとつの世界観を織り成す。いや、伴奏にして、かえって、ベザイデンホウトの美しいタッチも引き立ち、惹き込まれる。
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