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4月2日、没後400年、バードの、儚げで、やさしいミサに、400年を経て、今、心休まる思い...

イギリスの古楽ヴォーカル・アンサンブル、スティレ・アンティコが、ルネサンスの大家をフィーチャーする、"The Golden Renaissance"のシリーズ、第2弾、没後400年、ウィリアム・バード。
DECCA/4853951

ウィリアム・バード(1543-1623)。
イギリスが世界屈指の強国として第一歩を踏み出す頃、エリザベス1世(在位 : 1558-1603)の時代、女王の庇護下、王室チャペルで活躍し、イギリス・ルネサンスの黄金期を担った、バード。一方で、ローマ教会(カトリック)から離脱し、国教会が確立されようというイギリスに在って、カトリックに留まり、マイノリティでもあったバード... 王室チャペルの一員として、国教会のための英語による新しい典礼音楽を作曲しながら、カトリックの典礼のためのラテン語による伝統に則った教会音楽も多く作曲した。で、没後400年のメモリアル、スティレ・アンティコが取り上げるのは、晩年に書かれた傑作、4声のミサ(1592-93)。それを軸に、モテットなどを織り込んで、密やかに執り行われていた、カトリックの典礼を再現する。

いや、もう、ヘヴンリー!浮世の騒々しさを忘れさせてくれる、ルネサンス・ポリフォニーならではの美しさに心が溶ける思い... 一方で、溶けるほどの音楽から窺える、バードの英国流の興味深さ... 聖都、ローマを牽引したパレストリーナ(ca.1525-94)の声部の整理された新たなポリフォニー、パレストリーナ様式を思わせるシンプルさが感じられる一方で、そのシンプルさにイギリス・ルネサンスを象徴する甘やかさがたっぷりと補充され、聴き易さに芳しさが加わり、はぁ~ 耳福。また、ホモフォニーへ近付くような瞬間もあり、より訴求力のある音楽を展開!が、日陰の身、イギリスにおけるカトリック... その音楽、ローマの慇懃無礼なミサとはひと味違って、どこか儚げで、儚げだからこそのやさしさが溢れ、沁みる。

というバードを聴かせてくれたスティレ・アンティコ... まず、いつもながらの、素直な美しさを湛えたハート・ウォーミングな歌声、魅了される。で、彼らのハート・ウォーミングな歌声が、日陰のミサ、そこに集う人々に寄り添うバードの音楽のやさしさ、グっと引き立てて... いや、スティレ・アンティコの活動も20年を越え、そのハーモニーには円熟味が広がり、よりやさしく、より温かく響くようで... その響きに包まれれば、日陰のミサに集う人々のみならず、400年の時を経て、奇々怪々の現代を生きる者にも、心休まる一時を与えてくれる。


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