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10月27日、ドゥグーが歌う、シューベルトのアリアにリート... ドイツ・ロマン主義の"夢"の世界をさ迷う...

フランスのバリトン、ステファン・ドゥグーが、ラファエル・ピション率いるフランスのピリオド・アンサンブル、ピグマリオンの伴奏で歌う、シューベルトのリートに、アリアに... "Mein Traum"。

シューベルトの未完のオラトリオ『ラザロ』から、シモンのレチタティーヴォとアリア「私はどこに... 力ある者よ、塵の中に」で始まり、オペラ『アルフォンソとエストレッラ』の合唱にアリア、リストがオーケストレーションした「影法師」、そして、未完成交響曲... なのだけれど、2つの楽章の間にウェーバーのオペラ『オベロン』のアリアを挿むという大胆な組み合わせ!からの、女声合唱が歌うシューマンの「人魚」、ウェーバーのオペラ『オイリアンテ』からのアリア... シューベルトへと戻り、『アルフォンソとエストレッラ』の3幕への序奏からの、ブラームスのオーケストレーションによる「タルタロスの群れ」、ハープの伴奏でアヴェ・マリア!『ラザロ』の合唱があって、シューマンの『ゲーテのファウストからの情景』からのアリア、最後は、合唱で「神はわたしの羊飼い」。という構成... いや、これは、パスティッチョとしての新たなオラトリオと言えるのか?

ラモーとグルックのアリアでレクイエムを編んでしまう?!"ENFERS(黄泉の国)"という、凄いアルバムを繰り出したドゥグーとピションのコンビらしい、凝った構成で、独特な世界観を醸し出す、"Mein Traum"、私の夢。いや、シューベルトをメインで歌うのだけれど、ただ歌うのではない、冥界へと降りて行ったり、悪魔や妖精が登場する、超自然を歌うナンバーで綴るという、"Mein Traum"。ドゥグーとピションの夢は、悪夢?いや、"ENFERS"の続きか?彼らのダーク・ファンタジー感、おもしろい!

とはいえ、何気にアヴェ・マリア(ドゥヴィエルが歌う!)が聴こえてきたり、どこか夢っぽい未完成交響曲を夢の素材として使ってしまったり、最後は「神はわたしの羊飼い」のやさしい表情で全てを包むかのよう... うん、夢だわ、この感じ... で、その夢に、ドイツ・ロマン主義の幻想性を見事に反映させる!いや、凝り過ぎなほどに凝った構成だけれど、凝ってこそ抽出されるドイツという場所が内包するファンタジーに幻惑...

そんなファンタジーを呼び覚ますドゥグーの艶やかなバリトン!色彩を感じさせながら、憂いを含み、聴く者を夢に誘うかのような安心感のある歌声... いつ聴いても惹き込まれます。そして、シューベルトとウェーバーのアリアを歌うファの純真さ、アヴェ・マリアを歌うドゥヴィエルの無垢さ、2人の澄んだソプラノが、絶妙にアクセントを加え、さらに、ピグマリオンの合唱部隊の明朗なハーモニーが、夢を引き立てる!

で、ピグマリオンのオーケストラ!19世紀も卒なくこなしてしまう器用さに、ちょっと驚いた(未完成交響曲とか、めちゃ新鮮!)。で、ピリオド・オーケストラならではのエッジーさとともに、まだ初々しかった頃のドイツ・ロマン主義の瑞々しさ、しっかりと引き出すピションの指揮!でもって、フランス勢が捉えるからこそのファンタジックさ、あるなと... なればこそ引き立つ"夢"か... そんな音楽に触れていると、誰かの夢へと迷い込むような心地がしてきて、不思議。


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