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葛藤と向き合い、土台を固めた3カ月でした

大人の島留学・島体験に参画した皆さんの来島前・来島後、そしてこれからについてお届けする「私、島で働く。」

来島のきっかけ、仕事の様子、仕事への想い、自分自身の変化など1人1人のストーリーをお届けします。

今回、お話を伺ったのは
海士町立海士中学校で勤務していた2022年度4月期生の川端さん。

高校生のころに参加したイベントをきっかけに海士を知り、いつか海士で海士の教育を学びたい!そんな想いを抱いて来島したそう。

自分が想い描いていたものといざ動き出す時に見えてきた、違いと壁。
葛藤の中で見えてきた川端さんの気づきと学びに迫ります。

川端優木さん 奈良県出身

”いつか海士で”を実現させに

高校の時に参加した、島前高校主催のまちづくり甲子園をきっかけに海士を知りました。

3日間のフィールドワークやディスカッション通じてまちづくりについて考えを深め合う大会だったのですが、そこでの経験が自分にとってはすごく大きくて。

海士のまちづくりもだし、教育を通じて海士を魅力的にしていく、今ある海士の魅力をフルに生かした人を育む教育を実現させていたことに当時すごく衝撃と感銘を受けました。だから、3日ではなくもっと長く滞在して教育づくり・魅力発信方法・教育で地域を活性化する術について、いつか学びたいと思っていました。そして将来的にそういった現場で働きたいなというのが自分の想いです。

大学入学まで半年間のギャップイヤーを得て、有意義な大学生活を送るためにも、きちんと教育現場の現状や難しさを経験してから大学に入りたたいという思いもありました。

だから、もう海士に行くしかないなと思って来島を決めました。


やりたいことより、まずやるべきこと

自分は、海士中で勤務することになりました。初めは、総合の授業とかで関われたらなって思っていたのですが、なかなか思うようにいかず。

何をするにも、まずは関係性づくり。思う通りにはいかないなあっていうことを感じました。何かやる前にそれ以前に大切なことがあるという現実を3カ月を通じて痛感できたなと思います。

勤務初日の一枚。
「緊張しすぎて体と顔が固まっていて、今見れば面白いです。」とのこと。
これからの勤務に対するワクワクと不安が混じった一枚


まずは学習支援ていう形で現場に入って、3カ月近く経ってやっとはじめて総合の授業の打合せなどで同行させてもらえるようになったんです。

自分の想定では、来てすぐ現場に行って自分のやりたいことを実際にできると思っていました。けど、お互いに信頼関係を築くことや求められてるものにきちんと答えること、根本的に大切なことをすごく意識できたなと思います。


色々やってみたいことはあったけれど

来島前から島でやってみたかったことはたくさんあったけど、それを実現させるのは想像以上に壁が高くて。

自分が何か行動することで、自分の身の回りの人たちの関係性がどう変化して、どう影響するのかを考えなければならない。その壁を考えて、やりたいを形にしなければならないことが自分にとってしんどかった部分でした。

けど、それは自分にとっていい苦しみだったと思います。関係性も意識しながら行動できるって社会へ出てからもだし、自分が教育プログラムを実際につくるってなった時に必要な力になると思うので、すごく大切な経験ができたなと思います。

今も自分の中で問い続けているのは「いい人付き合い・関係性って何だろう?」ということ。関係性を築くって難しいなって。
これは島に来てからすごく考えさせらているなと思っています。


支援の在り方を問う

もともとは、海士の教育づくりを学びたいと思っていました。
けれど、それを何かしらの形にするには大きな壁があることに気がついてから、どういう視点で先生が生徒に声をかけているのか、そもそも先生の働き方ってどんな風なんだろとか、そういう部分を学ぼうって視点を変えていきました。

また、自分が学習支援員として働く中で「支援ってなんだろう」って考えるようになりました。支援ていうと困っている生徒のサポートっていうイメージだけど、ずっと付き添って教えることだけが支援ではないなって気がついて。ちょっと困ってそうだけど、見守ってあげることも支援の1つだっていうことを学びました。

帰宅途中でみる、夕焼けの景色。
空と山と田園風景と夕焼け。
海士の自然と人の営みを感じられる景色で、僕はとても好きです。

それからは、生徒自身が物事の”そもそも”の所を考えて、気づいて、行動する力。そういった力をつけてもらうには自分がどう接したらいいのかを考えるようになっていきました。これは実際に中学校で働いてみないと分からないことだったなって思います。

ただ、生徒から
「先生ずっと教室の後ろで立ってるけどなにしてるんですか?」って言われて。

自分では「もうちょっと様子見てあげよう、自分で考えさせてあげようかな」って考えて立っていたけど、生徒からはそう映っているんだなってことを知って。

過剰支援にならないためにも一歩引く時間も必要だけれど、バランスが必要なんだなって思います。

支援っていうキーワードを使う場面において、単にお金やモノ・技術を一方的に支援するのではなくて、自分の力で拓いてく能力をつける機会をこっち側から作ってあげること。そういうのも支援の1つだなと。
この気づきは自分にとって大切なものになったと思います。

ここに来る前は現場が変わったら教育はもっと良くなるんじゃないかって思っていたけど、それだけじゃない課題があることを知って教育に対して新しい見方を持てるようになったのは大きな収穫だと思います。


自分の選択と行動次第

ご飯食べ終わってからシェアハウスのメンバーと居間で仕事の悩みとか相談したり、ちょっと真面目な話とか、そういうのを話す機会があるのが楽しかったです。

それぞれが島に対して思うことをたくさん腹割って話して、いろんな視点や考えを持ってる人がいるんだなってことを知れました。

シェアハウスメンバーと3カ月の目標を立てました。

海士は個性的だし多様な人がいるからこそ、なんでもできる。自分の行動次第で得たいものを得られる環境のような。

けど、自分から声出さないとできない。やろうって強い気持ちがなかったらなりたい自分にはなれない。でもこれ、一見マイナスなように見えるけど、やればほぼ確実に叶える場所・環境があるってことだから、自分の選択と行動次第で変われる。

都会だと人が多くて、自分の身の回りの人としか関わらないから限定的なことしかできないけど、本気で親身になって考えてくれる人や他人でも寄り添ってくれる人がいるのが海士の良いところだなって思います。

職場の人に誘ってもらって行ったBBQ。明屋海岸の夕焼けと、キャンプの様子がエモすぎた。


ただ、自分はあまり行動できなかったなって思ってて、、。
他の体験生とか見ていると足を動かしてやりたいことを実現させていて、やればできるんだっていうのを感じました。

なんで動けなかったのか。
思い返すと学生から社会人という立場への変化が自分には大きかったように思います。自分は高校を卒業してすぐにここへ来ました。周りの皆ほとんどが年上で。そういったものに大きな影響を受けることは今までなかったのに、立場が変わった今、自分の中に「遠慮」があったように感じています。


土台固めの3カ月でした

上手くいかない葛藤のなかで生徒との向き合い方を考えたり、授業の設計もまだまだできない自分を知ったりするなかで、教育の根本的なところを学ぶことができました。また、改めて教育の大切さを再認識する時間にもなりました。そういった意味で、教育者を目指す自分にとって土台を固める3カ月だったと感じています。

これから島体験を考えている方に伝えたいことは他人と比べなくていいということ。

色んな人がいる環境だからこそ理想の自分とのギャップに葛藤することもあると思うけど、あなたはあなただし、のびのびできる環境もあるし、やらない選択も受け入れてもらえるのが海士だなって思います。

挑戦し続けることを求められるのがしんどくなったり、プレッシャーに感じることもあるけど自分のペースで自分と対話しながら、やるときにやっていけたらいいんじゃないかなって思います。


あとがき

思うようにはいかないことも多い島での暮らしの中で

ギャップや葛藤とどう向き合っていくのか

自分にとって大切にしたい価値観の輪郭が見える瞬間に

出会ってみませんか



▼島体験・島留学の特徴でもある研修制度をご紹介します!


▼島での在り方を問う


最後までお読みいただきありがとうございました!


         (インタビュー・執筆 / 大人の島留学生 田中沙采)

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