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嘘をついてでも幸せになればいい

本の感想というか、備忘録として。
これから少しずつ、読んだ本の覚書のようなものを集めていきたいと思ってます。
よろしければお付き合いください。

糸山秋子さんは好きな作家の1人。
(糸山さんの糸という字は糸が2つ)
話の中に憧れるような素敵な人はあんまり出てこないけれど、切羽詰まってる人、つかみどころのない人、ともすれば不幸に見える人、痛々しい人、どの人も「そういえばあの人、どうしてる?」と気になるような、あとを引く妙な存在感を残す。

今回読んだ本
『不愉快な本の続編』糸山秋子

この物語に出てくる主人公は、嘘つきで、つかみどころがなくて、流れ流れて生きている人。全身に張り巡らされている孤独感、寄る辺のなさが脈を打ち、その場しのぎのズルさ、わかりにくい残酷さ、その裏返しのようなやさしさで、逃げ続ける。

基礎体温が低くて、血管が細くて血が薄いのに、やけにトクトクと流れている人、という印象。その血は薄くても、切れば真っ赤なんだけど。

どこへ行っても「たびの人」で、その場に居場所を見つけない主人公は、最後は故郷に流れていく。戻る、というより、自分の人生を確かめに行くような感じで。
そして、突きつけられた事実に動揺しつつ、のらりくらりしている。ただし、今度ばかりは先が見えているような。

きっとこの人は、幸せになろうとか、社会的に成功しようとか思っていない。

じゃあ、何を求めてる?
誰にも何にもとらわれない、人を不幸にしようが、不愉快にしようが、お構いなしの、嘘を良しとする人生…なんだろうか。
もしかしたらそれこそが、嘘ではない、この人の「本当のこと」、嘘のない生き方なのか。

とても自由そうにも見える。けれど、引き換えに拠り所を持たない生き方ができるのか。
みんな、そんなことできないから、嘘をついてでも幸せを追求する。

そうしたければ、そうやって生きていけばいいんじゃない?
低体温の冷めた顔で、そんなふうに言われている気がした。

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