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【人生相談 駆け込み寺】第10回「がん療養も妻は『少し働いたら』」

浜の真砂は尽きても、世に悩みの種が尽きることはありません。いったん落ち着いて、胸に手を当ててみたりもして、果敢に無難に乗り越えていきましょう。※「夕刊フジ」で2016~2018年に連載(全17回)

【今回のお悩み】64歳で肺がんが見つかり、肺の3分の1を切除する手術をしました。医者は「もう年だし、しばらくは自宅でゆっくりしてください」と言い、親や妹も「長い間頑張ってきたんだから、老後を楽しんだら」と言ってくれました。私も、がんの再発防止のために自宅療養することにしました。でも、1カ月もすると、妻が「少しは働いたら」と私に当たり出したのです。「45年間働いてきたんだ。少しぐらい労れ!」と思うのですが、そう思いませんか。(無職・男性 66歳)

 いい奥さんですね。

 あなたの病気が、医学的にどういう状況なのかはわかりません。そして、奥さんがどういう意図で、「少しは働いたら」と言ったのかもわかりません。その上で申し上げますが、奥さんじゃなければ言えない、とてもありがたい言葉だと思います。

 もちろんあなたとしては、肺がんが見つかって大きなショックを受けただろうし、手術もたいへんだったでしょう。しかし、まだ64歳です。「ゆっくり老後を楽しむ」というイメージを抱いているようですが、具体的には毎日、何をして過ごすつもりでしょうか。

 来る日も来る日も家でゴロゴロされたら、奥さんとしてはたまったもんじゃありません。あなた自身も、それでは楽しくないでしょう。そして、おそらく同年代の奥さんだって、老後を楽しみたいと思っています。

 この1カ月、もしかしたら病気をいいことに、奥さんに甘え過ぎていたのではないでしょうか。奥さんは、せっかく拾った命を有効に使ってほしいと、もどかしかったかもしれません。家族以外は無責任に労えば済みますが、奥さんにとってあなたは、貴重な老後をいっしょに過ごす大切なパートナー。しょぼくれていないで、この先も魅力的な存在でいてもらわないと困ります。

 働くかどうかは、たぶんどっちでもいいこと。今すぐ無理して、元気ハツラツに振る舞う必要もありません。とりあえずは、奥さんへの感謝や思いやりの気持ちを言葉にして伝えたり、老後の楽しいイメージを語り合ったりして、安心してもらいましょう。当たってくれているうちは、まだ取り返しがつきます。

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