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俺たちに明日はあるか


1、一人は、とりあえず見た目はハンサムだが、自意識過剰の介護士。
家は、農家。名前は勉なので、トム。
すでに、農家の後継になるという決められた道が嫌で、働きに出て兼業農家となっている。休みの日は、家族で農作業。
後を継ぐべきかどうか悩んでいる。彼女無し。

2、一人、年齢不明のとっちゃん坊や。
東京に憧れるお父さんから、トキオと名付けられた。
お父さんは、ミュージシャンとっくに離婚して父子家庭で育つ。
ゲームマニアで働かないため、父親に自分の母親の様子を見てこいと、
都会のアパートを追い出される。
田舎に来て、おばあちゃんと暮らし始めるが、都会生活とのあまりのギャップに、体がついていかない。
田舎に来てから、鶏がペットとなり、心の支え。
都会で生活していた為、車の免許も、単車の免許も持っていない。
ある日、自転車で出かけたところ、自転車がパンクし帰れなくなる。
Googleで、検索してみるが、自転車修理の店はなし。
自転車を押して、日の暮れる道をとぼとぼ歩いていると、
車で、通りかかった介護士に声をかけられる。
「どうしたん?」
「パンクして、修理の店が検索しても出てこんし、。家に帰れん。」
「ああ、ネットには出てこんよ。佐藤の爺さんの店まで乗せてっちゃろか?」
「まじ、ありがとうございます。」
「なんで、自転車なん、自転車が好きなん?」
「免許持ってないんで。」
「へー。田舎じゃ珍しいね。」
これが、きっかけで仲良くなる二人。

3、そこに、介護士の幼馴染が加わる。
幼馴染は、日本人離れした見た目。
お母さんは、外国人。名前は、真田幸村にちなんで、
幸村(ユキ)。全く外国語は話せない。日本語オンリー。
そして、小麦アレルギーのため、超日本食派。
中途半端なビーガン。
武士道が好き。普段は、コンビニ店員。
夜は、近くの公民館で剣道を教えている。
普段から、剣道着を愛用している。
剣豪の修行に勤しむ。
三人は、いつもとっちゃん坊やの家に集まる。
初めは、取りとめのないダベリングから始まる。

「お前って、いつもカッコつけてるよな。なんで?」
「あのね。毎日おじいちゃんとかおばぁちゃんのお尻眺めてうんこ拭いてみなよ。しかも、土日は、泥に塗れて働いているんすよ。出かけるときぐらいカッコつけないとやってられんでしょう。」
「まあ、そうかもね。」
「ひよこかわいいなぁ。ねぇ、これ動画に撮らない?」
「俺の可愛いぴよこ?」
「ひよこの服作ろうか?」
と三人集まれば、ガヤガヤ楽しい。

携帯が払えなくなるため、トキオは、
トムのおうちの野菜出荷場でバイトすることになる。

「昼ごはん持って行かんなんか?」
「飯だけ、持ってこいや。あとは、野菜のクズを炒めて食べたらいいやん。」
「えー、ありがとう。」

普段は近所のおばぁちゃんばかりと働いているが、
夏休みに近所の女子高生がバイトに来てから、俄然やる気がでる。

「ゆみちゃんて、可愛いよなぁ。」
「あほ、あいつは小さい時は木登りがうまくて、猿みたいやってんぞ。
騙されるな。」
「嘘をつけ。あんなに可愛いのに。」

トキオの仕事意欲も湧いて、楽しく田舎暮らしを楽しみ始めた頃、
お父ちゃんが突然、都会からアパートを追い出されて帰ってくる。
昔の不良仲間と、農作業小屋で、バンドの練習を始める。
近くのキャンプ場で、演奏するという。
昔の自分みたいに、朝までゲームをして起きていて、
ちっとも働こうとしない。
唯一の移動手段の自転車を乗っていこうとするので、いつも喧嘩になる。

「やっぱり、遺伝やったんや。」

鶏をペットで飼い始めてから、早起きの習慣のついたトキオは、
不満でしょうがない。
「ゆみちゃんに、恥ずかしいがな。
  な、ぴよこ。あれが、お父ちゃんやて言われへん。」

三人は、バンドの手伝いをしているうちに、勝手に、
バンドの曲を使ってヒヨコダンスの動画をアップロードする。
たいして話題になるわけがないとたかを括っていたら、
ヒヨコダンスのMVがあれよあれよという間に、
超話題になっていく。
「おい、どうする?バレるかも。」
「なんで、あれがいいねん。」
「さあ。」
「お前の、親父才能あるんかな?」
「な、わけないやろ。」
「黙っておこう。それがいい。」

でも、やっぱりバレる。
けれども、気をよくして親父たちのバンド熱は、上がっていく。

それなのに突然、お父ちゃんがバンドを辞めると言い出す。
「どうしたん。お父ちゃんせっかくうまくいってるのに。」
「俺、バンドやめて真面目になって養子に行く。」
「え!」
よくよく話を聞いてみると、昔好きだった彼女が離婚して帰ってきて、
付き合ってるらしい。
そうして、本当にお父ちゃんは、荷物をまとめて養子に行った。
「最後にお父ちゃんは、この家も婆さんもお前に任すから。」と無責任に言って出て行った。
「俺は、育ててくれてありがとう。幸せになりや。」と思った。
そして、「金より、ポリシーより、音楽より、やっぱり女かよ。」 と、つぶやいた。

#大人のぬりえ







最後まで、読んで下さってありがとうございます! 心の琴線に触れるような歌詞が描けたらなぁと考える日々。 あなたの心に届いたのなら、本当に嬉しい。 なんの束縛もないので、自由に書いています。 サポートは友達の健康回復の為に使わせていただいてます(お茶会など)